原審に於て檢事は、第一審判決摘示と同旨の公訴事実を陳述したと記載されている。しかるに第一審判決摘示は、被告人Aは被告人BC等が他から窃取して來た賍物であることを知りながら、昭和二二年一〇月初頃より昭和二三年五月中頃迄の間一五回に亘り、被告人Aの肩書居宅に於て、B等より手織單衣着物一枚外衣類四百數十點を代金合計四十七萬七千二百圓にて買受け、以て故買したものである」というのであるから、檢事は、それぞれ獨立した一罪を成す多數の犯罪を一括して陳述したことが窺われる。論旨に従えば、かように各箇の犯罪を個別的に特定しない陳述は、數箇の犯罪事實の公訴として適格性を欠き、従つてかような漫然たる公訴事實ら九箇の犯罪事實について有罪判決をしたのは違法である、という。しかし、舊刑訴第二九一條第一項によれば、公訴を提起するには被告人を指定し犯罪事實及び罪名を示せば足りるのである。前記檢事の陳述に於ても、犯罪の數が一五であること、その各箇の犯罪について、被告人がAであること、罪名は賍物故買であること、賍物はB、C等が窃取した衣類であること、犯罪の日時は昭和二二年一〇月初頃から同二三年五月半頃迄であること、犯罪の場所はAの肩書居宅であること等は特定されているのであるからこの程度に犯罪事實を特定した檢事の陳述を不適法なものということはできない。
公訴事實の特定に必要なる事実の具体性の程度
舊刑訴法291條1項,舊刑訴法345條1項,刑法256條
判旨
共犯者の供述は被告人の自白の補強証拠となり得る。また、公訴事実において日時、場所、方法等により犯罪事実が特定されていれば、数個の犯罪を一括して陳述しても公訴提起の適格性を欠かず、認定された日時が公訴事実と多少相違しても審判対象を逸脱した違法とはならない。
問題の所在(論点)
1. 共犯者の供述を被告人の自白の補強証拠とすることができるか。2. 数個の犯罪を一括して記載・陳述した公訴事実は、犯罪事実の特定として有効か。3. 公訴事実に記載された日時と認定された日時に乖離がある場合、審判対象を逸脱する違法となるか。
規範
1. 自白の補強証拠(憲法38条3項)について、共犯者の供述は被告人の自白の補強証拠となり得る。2. 公訴事実の特定(刑事訴訟法256条3項参照)について、被告人の指定、犯罪事実及び罪名が示されており、日時・場所・内容等によって他の犯罪事実と区別できる程度に特定されていれば、数個の犯罪を一括して陳述することも適法である。3. 認定事実と公訴事実の不一致について、日時の多少の相違は、犯罪の同一性を害さず、防御に実質的な不利益を与えない限り、審判対象の逸脱には当たらない。
重要事実
被告人Aは、共犯者B・Cらが窃取した衣類であることを知りながら、昭和22年10月初旬から昭和23年5月中旬までの間、計15回にわたり自宅でこれらを買い受けた(贓物故買)。検察官はこれら数個の犯罪を一括して陳述し、原判決はそのうち9個の犯罪事実を認定した。その際、一部の犯行日時を「昭和23年5月29日頃」と認定したが、これは公訴事実の「5月中旬頃」と若干の乖離があった。また、被告人の自白を補強する証拠として、共犯者B・Cらの供述調書が用いられた。
あてはめ
1. 判例の趣旨に照らし、共犯者の供述を補強証拠とすることは憲法38条3項に違反しない。2. 本件公訴事実は、犯行回数、被告人、罪名、贓物の内容、期間、場所が特定されている。これらは各犯罪を個別的に特定するに足りる要素を備えており、一括陳述であっても公訴の適格性を欠くものではない。3. 犯罪の日時は罪となるべき事実そのものではなく、本件では「5月中旬」という概括的な記載に対し「5月29日頃」と認定されたに過ぎない。この程度の食い違いは、公訴事実を離れた審理とはいえず適法である。
結論
本件上告を棄却する。共犯者の供述を補強証拠とした点、及び公訴事実の特定や日時の認定における差異はいずれも適法であり、原判決に憲法違反や理由不備の違法はない。
実務上の射程
共犯者の供述が補強証拠となる点は現在の実務でも確立した判例法理である。公訴事実の特定については、各訴因が他の事実と識別できる程度に特定されているかを検討する際の基準となる。また、日時の不一致については、争点設定や防御の観点から「不可欠な要素」か否かを判断する際の、訴因変更の要否に関する議論の端緒として機能する。
事件番号: 昭和30(あ)964 / 裁判年月日: 昭和30年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者たる共同被告人の自白は、他の被告人の自白に対する補強証拠となり得る。これは、憲法38条3項および刑事訴訟法319条2項が定める自白の補強証拠の要件を満たすものとして解される。 第1 事案の概要:被告人Aが起訴された事件において、弁護人は原審の判断に不服を申し立てた。主な主張として、被告人の自…