舊刑訴第六〇條第二項第四號には特に「公開ヲ禁ジタルトキハ其ノ旨及理由」を公判調書に記載すべきものと規定されているのであつて、原則として公開してなさるべき公判手續を公開した場合には手續上當然のこととしてその旨公判調書に記載する必要はないものとせられている。これと同旨の見解は當裁判所大法廷の判例とするところである。(昭和二三年第二一九號同年六月一四日大法廷判決、判例集第二卷第七號六八〇頁以下参照)されば原審公判調書に特に公開を禁止した旨の記載がない本件においては所論公判の審理は、公開の法廷で行われたものと認められるのである。
公判の公開と公判調書の記載
舊刑訴法60條,舊刑訴法64條
判旨
被告人の自白の真実性を担保する補強証拠は、必ずしも犯罪事実を直接立証するものである必要はなく、他の証拠と総合して自白の真実性を担保し得るものであれば足りる。また、公判調書に公開禁止の記載がない限り、審理は公開の法廷で行われたものと推定される。
問題の所在(論点)
被告人の主観的態様(知情)に関する自白に対し、その事実を直接指し示していない間接的な証拠が補強証拠として認められるか。また、公判調書に公開の旨の記載がないことが憲法82条の対審公開原則に反するか。
規範
自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、自白にかかる犯罪事実を直接的に裏付けるものであることを要しない。自白以外の各証拠を相互に、あるいは自白と総合して、自白の真実性を保障し得る証拠力を有するものであれば、補強証拠として許容される。
重要事実
被告人は人絹織物等の賍品(盗品)をそれと知りながら預かり寄蔵したとして、賍品寄蔵罪等で起訴された。第一審において被告人は、共犯者らと対座した上で取引を行ったこと等を含め、自白をしていた。これに対し、補強証拠として採用された共犯者の検事聴取書には、別の者が盗品であることを知っていた旨の供述はあるものの、被告人自身の知情(盗品であることの認識)については直接言及されていなかったため、自白の補強証拠として不十分ではないかが争点となった。
あてはめ
本件では、被告人とB(被告人の情夫)及び共犯者Aが三名対座して取引を行った事実が被告人の自供により認められる。共犯者Aの聴取書において「Bが盗品であることを知っていた」旨の供述があることは、その場に同席していた被告人自身の知情に関する自白の真実性を、周囲の状況から間接的に裏付けるものといえる。したがって、当該聴取書は被告人の自白と総合することで、その真実性を補強する証拠力を有する。また、公開原則については、旧刑訴法上、公開を禁じた場合にのみその旨を記載すべきとされており、特段の記載がない以上、適法に公開されたものと認められる。
結論
被告人の自白は補強証拠により適法に裏付けられており、また公判手続の公開に関する違法も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の補強証拠の範囲(実質説的アプローチ)を示す重要判例。客観的な構成要件該当事実に加え、主観的要素についても自白の真実性を間接的に担保する証拠があれば補強証拠として認められるとする。答案上は、補強証拠の程度が争点となる場面で、「自白の真実性を保障し得るか」という観点から、周囲の客観的事実を示す証拠をあてはめる際に活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)840 / 裁判年月日: 昭和25年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の供述は、被告人の自白の真実性を担保する限り、憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう補強証拠となり得る。また、賍物罪における「知情」のように犯罪の主観的要素については、その点に関する直接の補強証拠がなくとも、自白と他の証拠を総合して犯罪事実全体を認定することが許される。 第1 事案の…
事件番号: 昭和25(れ)1367 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白に対する補強証拠は、自白と相まって犯罪事実を認定できる程度のものであれば足り、必ずしも犯罪事実の全部を直接裏付けるものであることを要しない。 第1 事案の概要:被告人Aは盗品等有償譲受罪で起訴された。原審は、被告人が盗品であることの情を知っていた(盗品知情)という事実を認定するにあたり、(1)…