一 被告人の自白が存在する場合に相被告人の供述を補強證據とするを得ることは、當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六七號同年七月一九日大法廷判決參照) 二 舊刑訴法第三六〇條第二項(刑訴法第三三五條第二項)は「法律上……刑ノ加重減免ノ原由タル事實上ノ主張」のあつたときはこれに對する判斷を示せと規定しているのであるが同項にいわゆる「法律上刑ノ加重減免ノ原由タル事實上ノ主張」とはある事實が存在する以上必ず刑を加重減免すべきものと法律が特に規定している事實の主張を指し、刑の裁量の標準となる諸般の情状に關する主張の如きをいうのではない。
一 相被告人の供述と補強證據 二 舊刑訴法第三六〇條第二項の法意
憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項,舊刑訴法360條2項
判旨
被告人の自白が存在する場合に、共犯者(相被告人)の供述を補強証拠とすることができる。また、刑の加重減免の事由として判決に判断を示すべき主張とは、法律上の加減事由を指し、酌量減軽や執行猶予等の情状に関する主張は含まれない。
問題の所在(論点)
1. 共犯者(相被告人)の供述を補強証拠として、被告人の自白のみによる断罪(憲法38条3項・刑訴法319条2項違反)を回避できるか。2. 判決に判断を示すべき「法律上刑の加重減免の原由たる事実上の主張」に、酌量減軽や執行猶予の情状に関する主張が含まれるか。
規範
1. 被告人の公判廷外の自白が存在する場合、共犯者(相被告人)の供述を、憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう補強証拠とすることができる。2. 刑訴法335条2項にいう「法律上刑の加重減免の原由たる事実上の主張」とは、その事実があれば法律上必ず刑を加重減免すべきものとして規定されている事実の主張を指し、裁量的な情状(刑法66条の酌量減軽や同25条の執行猶予等)に関する主張は含まれない。
重要事実
被告人両名に対し賭博開帳図利等の罪が問われた事案。原審は、被告人自身の捜査段階での自白に加え、共犯関係にある相被告人Aの供述録取書を証拠として採用し、有罪判決を下した。被告人側は、①相被告人の供述は補強証拠とならず自白のみによる断罪であること、②相被告人の供述は被告人Bの開帳事実を指しておらず採証法則に反すること、③弁護人が主張した酌量減軽や執行猶予の情状について原判決が判断を示さなかったことが、旧刑訴法360条2項(現335条2項)に違反することを理由に上告した。
あてはめ
1. 判例(最大判昭23.7.19)に照らし、相被告人の供述を補強証拠とすることは許容される。本件では相被告人Aの供述中にある「Cの主人」が被告人Bを指すことは他の証拠との対照により容易に推断でき、事実認定に不合理はない。2. 刑訴法335条2項が判断の明示を求めるのは、正当防衛や心神喪失、自首、未遂減軽などの法的減免事由に限られる。本件で弁護人が主張した「刑の酌量減軽又は執行猶予を受けるに適する事実」は、裁判所の広範な裁量に属する情状に関する主張にすぎず、同項の対象外である。したがって、判決でこれに判断を示さずとも違法ではない。
結論
1. 共犯者の供述は補強証拠となり、自白のみによる断罪にはあたらない。2. 情状の主張は刑の加重減免の原由たる事実上の主張に該当せず、判決での判断明示は不要である。本件各上告を棄却する。
実務上の射程
共犯者の自白(供述)が補強証拠となる点は、刑事訴訟法の基本判例として定着しており、答案上は補強証拠の適格性を論じる際に活用する。刑訴法335条2項の範囲については、裁量的減免事由が同項の対象外であることを示す際のリーディングケースとなる。
事件番号: 昭和24(れ)1365 / 裁判年月日: 昭和24年8月2日 / 結論: 棄却
一 その作成にあたり、反對訊問の機會を與えなかつた檢事聴取書の如き、書類も、刑訴應急措置法第一二條の制限の下に、これを證據とすることができるとしても、憲法第三七條第二項の趣旨に反するものではなく、刑訴應急措置法第一二條が違憲でないことは當裁判所大法廷の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第八三三號、同二四年五月一…
事件番号: 昭和30(あ)556 / 裁判年月日: 昭和30年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白を補強すべき証拠が存在する場合には、憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう自白の補強法則に反せず、有罪判決を維持することができる。 第1 事案の概要:被告人Aの自白に基づき有罪判決が下された事案において、弁護人は第一審判決が挙示した証拠の中に自白を補強すべき証拠が存在しないと主張し…
事件番号: 昭和27(れ)9 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の供述を他の共犯者の自白の補強証拠とすることは、憲法38条3項の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人および相被告人らが共同して犯罪に及んだとされる事案において、原審は被告人の自白に加えて、相被告人の供述などの各証拠を総合して犯罪事実を認定した。これに対し被告人側は、相被告人の供述を補…