しかし銃砲等所持禁止令はその第二條後段において、「その所持する鉄砲等は裁判により没收する場合を除いては何人が所有していても行政の處分でこれを没收する」と規定しているに過ぎないのであつて、所論のように裁判によつて没收し得る場合には裁判上必ず没收すべき旨すなわち裁判上の没收義務を定めているものではない。
銃砲通所持禁止令第二條後段は必要的没收の規定にあらず
銃砲等所持禁止令2條後段,刑法19條
判旨
刑法19条に基づく没収は裁判所の裁量に委ねられており、没収し得る場合であっても没収しないことが違法となるわけではなく、その不作為について理由を判示する必要もない。
問題の所在(論点)
裁判所が没収し得る物件について没収を言い渡さないことは許されるか、また、その場合に不没収の理由を判示すべき義務を負うか。
規範
刑法19条による没収の言渡しは、裁判所の裁量に属する事項である。特別法に別段の定めがない限り、裁判所が没収し得る対象について没収しない旨の判断をしたとしても違法ではなく、その理由を判決書に記載すべき義務も存在しない。
重要事実
被告人がピストルを所持していた事案において、原審は被告人らに対して有罪判決を下したが、当該ピストルについての没収を言い渡さなかった。これに対し、弁護側は銃砲等所持禁止令の規定等を根拠に、裁判上で没収し得る場合には必ず没収すべき義務があること、および没収しない場合にはその事由を判示すべきであることを主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1759 / 裁判年月日: 昭和25年1月10日 / 結論: 棄却
論旨は、審理の冒頭における概括的な犯罪事実の承認によつて、犯罪事實の内容に亘り全部を認めたものとすることはできないと主張するなるほど、被告人が概括的の問答では犯罪事實を認めても、個々の點についてはこれに反する供述をしたような場合には、冒頭の答えだけで細部に亘る悉くの事實を認めたものとは云い難いこともあらう。しかしその何…
あてはめ
銃砲等所持禁止令2条後段は、行政処分による没収と裁判上の没収の関係を規定するに過ぎず、裁判上の没収義務を課したものではない。また、一般原則である刑法19条も、その文言から没収するか否かを裁判所の裁量に委ねていると解される。したがって、原審がピストルを没収し得たにもかかわらず没収の言渡しをせず、かつその事由を判示しなかったことは、法令に反するものでも判断遺脱に当たるものでもない。
結論
没収は裁判所の裁量行為であり、没収しないことやその理由を記載しないことは適法である。
実務上の射程
没収の「任意的」性質を確認した判例である。答案上では、没収の要件(19条1項各号)を充たす場合であっても、裁判所が政策的判断や諸般の事情により没収しない自由を有することを説明する際に引用できる。また、不没収に関する理由不備の主張を否定する際の論拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)260 / 裁判年月日: 昭和23年6月10日 / 結論: 棄却
共犯者間における刑の差等その他科刑の根據となる事由は刑訴第三六〇條第一項にいわゆる罪となるべき事實に該當しないから、判決にこれが理由を判示しなかつたからといつて所論のような違法があるとはいえない。ことは、原判決自體で明瞭であるから之を理由不備と云うことはできない。
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和26(れ)713 / 裁判年月日: 昭和26年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択や事実認定に関する非難、および量刑不当の主張は、刑事訴訟応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決の証拠取捨選択および事実認定を非難し、あわせて量刑が不当であるとして上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):原審の専権事項で…
事件番号: 昭和24(れ)2721 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
被告人が一定の機関、法定の除外事由なくして右露劍一振を所持していた事實が認定される以上、その所有權が何人に屬していたとか、或はその民事上の保管責任者が何人であつたかというような事情は銃砲等所持禁止令違反罪の成立には何等の消長を來たすものではない。そうして又被告人が同令施行の時である昭和二一年六月一五日當時成年に達してい…