共犯者間における刑の差等その他科刑の根據となる事由は刑訴第三六〇條第一項にいわゆる罪となるべき事實に該當しないから、判決にこれが理由を判示しなかつたからといつて所論のような違法があるとはいえない。ことは、原判決自體で明瞭であるから之を理由不備と云うことはできない。
科刑の根據となる事由についての判示の要否
刑訴法360條1項
判旨
共犯者間における刑の重軽の差や科刑の根拠となる事由は、刑事訴訟法335条1項(旧360条1項)にいう「罪となるべき事実」には該当せず、判決にその理由を付す必要はない。
問題の所在(論点)
共犯者間における量刑の差異や科刑の具体的根拠が、刑事訴訟法335条1項(旧360条1項)の「罪となるべき事実」として、判決にその理由を付すべき事項に含まれるか。
規範
刑事訴訟法335条1項(旧360条1項)が判決に示さなければならないとする「罪となるべき事実」とは、構成要件に該当する具体的記述を指す。共犯者間における刑の差等や、その他具体的な量刑の根拠となる事由は、これに含まれない。
重要事実
被告人は、正当な理由なく拳銃および実包を所持していた。被告人は、当該拳銃等が第三者から数時間前に預かったものであると主張したが、原審はこれを詳細に認定することなく有罪とした。また、共犯者との間で刑の重さに差があること等について、判決に具体的な理由が付されていなかった。
事件番号: 昭和26(れ)713 / 裁判年月日: 昭和26年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択や事実認定に関する非難、および量刑不当の主張は、刑事訴訟応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決の証拠取捨選択および事実認定を非難し、あわせて量刑が不当であるとして上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):原審の専権事項で…
あてはめ
被告人は共犯者との刑の差等について理由の不備を主張するが、刑の量定に関する事由は、犯罪の成立そのものを基礎付ける「罪となるべき事実」とは性質を異にする。したがって、共犯者間での刑の均衡や具体的な科刑の根拠について判決文に明示的な理由が付されていなくても、理由不備の違法(法378条4号)には当たらない。
結論
共犯者間の刑の差等は「罪となるべき事実」に該当しないため、これに理由を付さなかった原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
量刑事情(一般情状)が法335条1項の「罪となるべき事実」に含まれないことを示した。もっとも、現代の刑事裁判実務では法335条2項により法律上の減免の理由となる事実等は明示が必要であり、また情状についても「判決の理由」として一定の説示がなされるのが通常であるが、構成要件該当事実と同等の厳格な証明や判示が必要なわけではないという整理で用いる。
事件番号: 昭和25(あ)3365 / 裁判年月日: 昭和26年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一罪として起訴された犯罪の一部が証明不能により無罪と認められる場合であっても、主文で特に無罪を言い渡す必要はなく、有罪と認めた他の部分のみを判示すれば足りる。 第1 事案の概要:被告人は拳銃と実砲の所持につき、一罪として起訴された。第一審は、その実砲のうち一部の不法所持について、犯罪の証明がないも…
事件番号: 昭和25(れ)1212 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決における「罪となるべき事実」とは、構成要件に該当する事実、違法性及び責任を基礎付ける事実を指し、その他の情状や証拠の評価に関する事項については、判決にその判断を明記することを要しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、原判決が特定の事項について判断を記さなかったこ…
事件番号: 昭和24(れ)3071 / 裁判年月日: 昭和25年2月23日 / 結論: 棄却
しかし銃砲等所持禁止令はその第二條後段において、「その所持する鉄砲等は裁判により没收する場合を除いては何人が所有していても行政の處分でこれを没收する」と規定しているに過ぎないのであつて、所論のように裁判によつて没收し得る場合には裁判上必ず没收すべき旨すなわち裁判上の没收義務を定めているものではない。
事件番号: 昭和23(れ)1556 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
一 本件のごとき銃砲等所持禁止令違反事件の審理においては必ずしも常に所持の目的物(本件においては拳銃等)を公判廷において證據調をしなければ、處罰ができないと言うものではない。 二 銃砲等所持禁止令違反の犯罪において犯罪の構成要件は當該法令に掲げる目的物を所持することである所論「法廷の特別の理由がないのに拘わらず」という…