判旨
一罪として起訴された犯罪の一部が証明不能により無罪と認められる場合であっても、主文で特に無罪を言い渡す必要はなく、有罪と認めた他の部分のみを判示すれば足りる。
問題の所在(論点)
一罪として起訴された犯罪事実の一部が証明不能である場合、裁判所は判決主文においてその部分を個別に無罪と表示すべきか(一部無罪の主文表示の要否)。
規範
一罪(単一かつ同一の訴因)として起訴された事実の一部について犯罪の証明がないと判断した場合であっても、判決の主文においてその部分を無罪と表示する必要はなく、有罪となる残余の部分についてのみ有罪の判示をすれば足りる。
重要事実
被告人は拳銃と実砲の所持につき、一罪として起訴された。第一審は、その実砲のうち一部の不法所持について、犯罪の証明がないものと判断したが、主文においてその部分についての無罪の言渡しを行わなかった。被告人側は、この一部無罪を主文で示さなかったことを違法として上告した。
あてはめ
本件において、拳銃と実砲の所持は包括して一罪として構成されており、訴因の単一性が認められる。このような場合、裁判所が一部の事実(実砲の一部の所持)について証明がないと判断しても、残余の事実(拳銃および他の実砲の所持)について有罪が認められる以上、訴因全体としては有罪の結論となる。したがって、証明不能な一部について特段の無罪言渡しをしないことは、刑事訴訟法の予定する判決形式として適法であるといえる。
結論
一罪の一部が無罪となる場合でも、主文で無罪を言い渡す必要はなく、有罪部分のみを判示すれば足りるため、原判決に違法はない。
実務上の射程
訴因が単一(一罪)である場合に限り適用される法理である。これに対し、併合罪として起訴された数罪の一部が無罪となる場合には、主文で無罪を表示しなければならない(刑訴法336条)。実務上、包括一罪や観念的競合の事案で一部の事実が認められない際の判決書の書き方を規律する射程を持つ。
事件番号: 昭和25(れ)2875 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和27(あ)3989 / 裁判年月日: 昭和28年10月15日 / 結論: その他
原審が控訴審として既に第一審判決の確定によつて完結した銃砲等所持禁止令違反事件についてまで審判をなしたのは違法であり、刑訴四一一条一号に基きこの部分を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。(そして、右銃砲等所持禁止令違反の点については、前示の如く第一審判決の確定により事件は完結し、その判決の効力が…