原審が控訴審として既に第一審判決の確定によつて完結した銃砲等所持禁止令違反事件についてまで審判をなしたのは違法であり、刑訴四一一条一号に基きこの部分を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。(そして、右銃砲等所持禁止令違反の点については、前示の如く第一審判決の確定により事件は完結し、その判決の効力が持続するのは当然であるから、本件ではこの点に関する原判決を破棄するのみで足るものと認める。)
刑訴四一一条に当る一事例。第一審で確定した部分につき控訴審が更に審判したとき
憲法39条後段,刑訴法411条,刑訴法357条
判旨
被告人が一部の罪名についてのみ控訴を申し立てた場合、控訴しなかった残りの有罪部分は、控訴期間の経過により確定し、完結する。既に確定した部分について、控訴審が重ねて審判を行い有罪を言い渡すことは、著しく正義に反する違法な判決として破棄を免れない。
問題の所在(論点)
数罪が併合罪の関係にある場合に、被告人が判決の一部についてのみ控訴し、他の部分について不服を申し立てなかったとき、不服を申し立てなかった部分は確定するか。また、控訴審がその確定した部分について再び審理し、判決を言い渡すことの可否。
規範
併合罪(刑法45条)の関係にある複数の犯罪について、第一審がそれぞれ別個の刑を言い渡し、あるいは刑法50条に基づき後段併合罪として処断した場合において、被告人がその一部についてのみ不服を申し立てたときは、不服を申し立てなかった部分は分離して確定する。控訴審の審判対象は、上訴によって移審した範囲に限定され、既に確定した部分に及ぶことはない。
重要事実
被告人は、第一審判決において、銃砲等所持禁止令違反の罪(事実3)につき懲役4月、および暴力行為等処罰法違反等の罪(事実5以下)につき懲役1年6月の言い渡しを受けた。被告人は後者の部分についてのみ控訴を申し立て、事実3の銃砲等所持禁止令違反については不服を申し立てなかった。その後、事実3については第一審判決が確定し刑の執行も終了したが、控訴審(原審)は既に確定した事実3についても審判を行い、重ねて懲役4月の刑を言い渡した。
事件番号: 昭和40(あ)2719 / 裁判年月日: 昭和41年6月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】第一審判決のうち、検察官が一部についてのみ控訴し、被告人が控訴しなかった場合、控訴されなかった部分は控訴期間の経過により確定する。したがって、控訴審が確定した部分についてまで審判を行うことは、係属していない事件を審理する違法がある。 第1 事案の概要:被告人に対し、第一審(山形地裁鶴岡支部)は、判…
あてはめ
本件では、被告人は第一審判決のうち事実5以下の部分にのみ控訴し、事実3(銃砲等所持禁止令違反)については不服を申し立てていない。したがって、事実3に関する判決部分は控訴期間の経過により既に確定し、事件は完結している。それにもかかわらず、原審がこの確定済みの事実について再び実体審理を行い、第一審と同一の事実を認定して改めて刑を言い渡したことは、判決の確定による効力を無視した重大な手続き上の誤りである。このような違法は、刑訴法411条1号にいう「著しく正義に反するもの」と認められる。
結論
原判決中、既に第一審で確定していた銃砲等所持禁止令違反に関する部分は、二重の審判を禁ずる原則および上訴の範囲を逸脱した違法があるため、破棄されるべきである。
実務上の射程
併合罪のうち一部についてのみ上訴がなされた場合の、いわゆる「上訴不可分の原則」の例外(刑訴法348条の準用範囲外)を確認する事例である。答案上では、上訴の範囲(移審の範囲)と確定の時期を論じる際に、一部上訴が可能な独立した罪の間では不服のない部分は分離確定し、控訴審の審理対象から外れることを示す根拠として用いる。
事件番号: 昭和25(あ)3365 / 裁判年月日: 昭和26年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一罪として起訴された犯罪の一部が証明不能により無罪と認められる場合であっても、主文で特に無罪を言い渡す必要はなく、有罪と認めた他の部分のみを判示すれば足りる。 第1 事案の概要:被告人は拳銃と実砲の所持につき、一罪として起訴された。第一審は、その実砲のうち一部の不法所持について、犯罪の証明がないも…
事件番号: 昭和36(あ)2289 / 裁判年月日: 昭和37年6月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】第一審判決の一部(無罪部分)のみについて検察官が控訴し、被告人が自己の控訴を取り下げた場合、控訴審の審判対象は当該控訴がなされた部分に限定され、既に確定した有罪部分を審理することは許されない。 第1 事案の概要:第一審判決は、被告人の一部の事実について有罪、一部(銃砲刀剣類等所持取締法違反)につい…
事件番号: 昭和27(あ)3790 / 裁判年月日: 昭和28年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白のみを証拠として有罪とすることは憲法38条3項に抵触するが、被害者の盗難届等の自白以外の証拠が併存する場合には補強証拠が存在するものとして、同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは窃盗等の罪に問われ、第一審において有罪判決を受けた。被告人らは自白をしていたが、弁護人は当該判決が…
事件番号: 昭和26(れ)1758 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由には該当せず、特段の事情がない限り同法411条による職権破棄の対象にもならない。 第1 事案の概要:上告人は量刑が不当であることを理由に上告を申し立てたが、原判決の量刑判断において具体的にどのような憲法違反や判例違反があるのかについては明確な…