判旨
第一審判決のうち、検察官が一部についてのみ控訴し、被告人が控訴しなかった場合、控訴されなかった部分は控訴期間の経過により確定する。したがって、控訴審が確定した部分についてまで審判を行うことは、係属していない事件を審理する違法がある。
問題の所在(論点)
検察官が第一審判決の一部に対してのみ控訴を申し立て、被告人が控訴しなかった場合に、控訴されなかった部分が確定するか。また、その部分について控訴審が審判を行うことの可否が問われた。
規範
第一審判決において複数の罪について有罪が言い渡された場合、検察官がその一部についてのみ控訴し、かつ被告人が控訴を申し立てなかったときは、控訴の対象とならなかった部分は控訴期間の経過とともに確定する。この場合、控訴審の審判対象は控訴がなされた部分に限定され、既に確定した部分について審判を行うことは許されない。
重要事実
被告人に対し、第一審(山形地裁鶴岡支部)は、判示第一(傷害等)につき懲役3年6月、判示第二(銃刀法違反)につき懲役6月の判決を言い渡した。検察官は、右判決のうち判示第一の部分にのみ限って控訴を申し立てたが、被告人は控訴を申し立てないまま控訴期間を経過した。しかし、原審(仙台高裁)は、事件の全部について審判を行い、判示第二の部分についても第一審判決を破棄して被告人を懲役6月に処する判決をした。
あてはめ
本件では、検察官が判示第一の罪に関する部分のみを限定して控訴し、被告人は控訴しなかった。そのため、判示第二の罪に関する部分は、控訴期間の経過(4月24日)により確定しており、既に刑の執行も終了している。それにもかかわらず、原審は係属していないはずの判示第二の罪についても審理し、判決を下している。これは、裁判の対象となっていない事件を審判したものであり、刑訴法411条1号にいう「著しく正義に反する」違法があるといえる。
結論
原判決中、判示第二の罪に関する部分は、係属していない事件を審判した違法があるため破棄を免れない。
事件番号: 昭和27(あ)3989 / 裁判年月日: 昭和28年10月15日 / 結論: その他
原審が控訴審として既に第一審判決の確定によつて完結した銃砲等所持禁止令違反事件についてまで審判をなしたのは違法であり、刑訴四一一条一号に基きこの部分を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。(そして、右銃砲等所持禁止令違反の点については、前示の如く第一審判決の確定により事件は完結し、その判決の効力が…
実務上の射程
一部控訴(刑訴法357条)がなされた場合の審判対象と確定時期に関する重要判例。答案上では、一部控訴の適法性を前提に、控訴されなかった部分の確定(移審の範囲と審判対象の不一致)を論じる際に活用できる。特に「不可分一体」の関係にない別個の罪について、検察官が一部を限定して控訴した場合の処理を明確にするものである。
事件番号: 昭和36(あ)2289 / 裁判年月日: 昭和37年6月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】第一審判決の一部(無罪部分)のみについて検察官が控訴し、被告人が自己の控訴を取り下げた場合、控訴審の審判対象は当該控訴がなされた部分に限定され、既に確定した有罪部分を審理することは許されない。 第1 事案の概要:第一審判決は、被告人の一部の事実について有罪、一部(銃砲刀剣類等所持取締法違反)につい…
事件番号: 昭和57(あ)554 / 裁判年月日: 昭和57年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑の際に被告人の前科を悪性格の証左として参酌することは、前科に係る犯罪について重ねて刑事責任を問うものではないため、憲法39条後段の二重処罰の禁止には抵触しない。 第1 事案の概要:被告人の刑事裁判において、裁判所が量刑の判断(量刑不当の控訴趣意に対する判断)に際し、被告人の前科について判示した…
事件番号: 昭和43(あ)244 / 裁判年月日: 昭和44年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第一審判決を破棄して自ら有罪判決を宣告する場合、独自の判断により量刑を行うことができる。その際、控訴趣意に含まれる量刑不当の主張に対して個別の判断を示さなくても違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人Bの第一審判決につき、控訴審(原審)は法令違反があるとしてその全部を破棄した。控訴審は…
事件番号: 昭和38(あ)546 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
日本刀不法所持罪はその不法所持自体によつて成立し、日本刀を誇示して脅迫する暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪とは犯罪構成要件を異にし、被害法益も異つているから、第一審判決が同判示第二において認定する日本刀の不法所持が、同判示第一のこれを誇示してなした脅迫のためのものであつて、誇示した間は、誇示即ち所持の関係にあつても、…