判旨
第一審判決の一部(無罪部分)のみについて検察官が控訴し、被告人が自己の控訴を取り下げた場合、控訴審の審判対象は当該控訴がなされた部分に限定され、既に確定した有罪部分を審理することは許されない。
問題の所在(論点)
検察官が第一審の無罪部分のみについて控訴し、被告人が控訴を取り下げた場合において、控訴審が第一審の有罪部分(不服申立てのない部分)を審判対象とできるか。
規範
控訴審における審判の範囲は、控訴の申立てがあった部分に限定される。第一審判決のうち、控訴がなされなかった部分は、控訴期間の経過または控訴の取下げによって確定し、控訴審の審判対象から離脱する(不服申立てのない部分は審判の対象とならない)。
重要事実
第一審判決は、被告人の一部の事実について有罪、一部(銃砲刀剣類等所持取締法違反)について無罪を言い渡した。検察官は無罪部分のみについて控訴を申し立て、被告人は当初第一審判決全部に対し控訴したが後にこれを取り下げた。しかし、原審(控訴審)は、検察官が控訴した無罪部分のみならず、被告人の取下げにより既に確定したはずの有罪部分についても審判を行った。
あてはめ
検察官の控訴申立書によれば、控訴の範囲は第一審の無罪部分(銃刀法違反の一点)に限定されていた。また、被告人は第一審の有罪部分を含む全部について控訴したが、その後にこれを取り下げている。この時点で、有罪部分は確定し、控訴審には検察官が控訴した無罪部分のみが係属していたといえる。それにもかかわらず、原判決が確定済みの有罪部分まで審判したことは、審判の対象となっていない事件を審理したものであり、重大な法令違反にあたる。
結論
原判決には、控訴がなく審判対象となっていない部分を審判した違法がある。したがって、原判決のうち確定部分を除いた、適法に係属していた部分についてのみ自判し、被告人を処断する。
事件番号: 昭和40(あ)2719 / 裁判年月日: 昭和41年6月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】第一審判決のうち、検察官が一部についてのみ控訴し、被告人が控訴しなかった場合、控訴されなかった部分は控訴期間の経過により確定する。したがって、控訴審が確定した部分についてまで審判を行うことは、係属していない事件を審理する違法がある。 第1 事案の概要:被告人に対し、第一審(山形地裁鶴岡支部)は、判…
実務上の射程
刑事訴訟における「上訴による審判対象の限定」を示す重要判例。答案では、一部控訴の効力や、控訴審における審理範囲(刑訴法358条、392条等の関連)を論じる際、不服申立てのない部分は確定し、控訴審の審判対象から外れることを示す根拠として活用する。
事件番号: 昭和27(あ)3989 / 裁判年月日: 昭和28年10月15日 / 結論: その他
原審が控訴審として既に第一審判決の確定によつて完結した銃砲等所持禁止令違反事件についてまで審判をなしたのは違法であり、刑訴四一一条一号に基きこの部分を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。(そして、右銃砲等所持禁止令違反の点については、前示の如く第一審判決の確定により事件は完結し、その判決の効力が…
事件番号: 昭和25(あ)3365 / 裁判年月日: 昭和26年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一罪として起訴された犯罪の一部が証明不能により無罪と認められる場合であっても、主文で特に無罪を言い渡す必要はなく、有罪と認めた他の部分のみを判示すれば足りる。 第1 事案の概要:被告人は拳銃と実砲の所持につき、一罪として起訴された。第一審は、その実砲のうち一部の不法所持について、犯罪の証明がないも…
事件番号: 昭和29(あ)548 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】没収の根拠法条の適用に誤りがある場合でも、当該物件が他の法条に基づき適法に没収し得るものであれば、直ちに判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は銃砲刀剣類等所持取締令違反等の罪に問われ、原審は証拠物件である短刀一振を同令30条に基づき没収した。しかし、当該短…
事件番号: 昭和34(あ)2063 / 裁判年月日: 昭和37年4月6日 / 結論: 棄却
火薬類取締法五九条二号、二一条の各規定は、憲法二九条に違反しない。