判旨
控訴審が第一審判決を破棄して自ら有罪判決を宣告する場合、独自の判断により量刑を行うことができる。その際、控訴趣意に含まれる量刑不当の主張に対して個別の判断を示さなくても違法とはならない。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審判決を破棄自判する場合において、被告人側が主張した量刑不当の控訴趣意に対し、個別の判断を示す必要があるか。控訴審の自判時における量刑判断の性質が問題となる。
規範
控訴審が、第一審判決につき法令違反があるとしてその全部を破棄し、改めて有罪判決を宣告する場合には、控訴審が独自の判断に基づいて量刑をなすべきものである。したがって、判決において被告人および弁護人が主張した量刑不当の点について逐一判断を示さなかったとしても、審理不尽や判決理由不備等の違法は生じない。
重要事実
被告人Bの第一審判決につき、控訴審(原審)は法令違反があるとしてその全部を破棄した。控訴審は、独自の判断により改めて被告人Bに対して有罪判決を宣告したが、その際、被告人および弁護人が控訴趣意として主張していた「第一審の量刑は不当である」という点について、判決文中で明示的な判断を示さなかった。これに対し、弁護人は手続上の違法を理由に上告した。
あてはめ
本件において、原審は被告人Bに関する第一審判決を法令違反に基づき全部破棄している。破棄自判において、控訴審は第一審の量刑を維持・変更するのではなく、改めて自ら適正な刑を決定する立場にある。原審は独自の判断によって量刑を行っており、これは独立した量刑権の行使である。そのため、破棄された第一審の量刑が妥当か否かという量刑不当の主張について、重ねて判断を示す必要はないといえる。
結論
控訴審が第一審を破棄して改めて刑を言い渡した以上、量刑不当の主張に対する判断を示さなかったとしても違法はなく、上告は棄却される。
事件番号: 昭和42(あ)130 / 裁判年月日: 昭和42年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締法違反と火薬類取締法違反が観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、その旨の適用を欠いても、結果として重い方の罪の刑で処断していれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲刀剣類等所持取締法違反および火薬類取締法違反の罪に問われた。第一審…
実務上の射程
控訴審が破棄自判(刑訴法400条但書)を行う際の判決書作成実務において、量刑不当の控訴趣意への応答義務を否定したものである。司法試験においては、控訴審の構造(事後審的性格と続審的性格の交錯)や、判決の理由不備(378条4号)の成否を論ずる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和43(あ)1521 / 裁判年月日: 昭和44年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決言渡日に施行された改正刑法を適用せず、旧法を適用して併合罪の処理を行ったことは法令の適用誤りにあたるが、原判決を破棄しなくても著しく正義に反するとまではいえない場合には、刑訴法411条による職権破棄を要しない。 第1 事案の概要:被告人は複数の罪に問われ、原判決が言い渡された当日、併合罪の規定…
事件番号: 昭和57(あ)1721 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が暴力団構成員であることをもって直ちに量刑上不利益な差別的処遇をすることは許されないが、当該属性を考慮したとしても直ちに憲法14条に反する不当な差別には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が暴力団の構成員であるという事実が量刑において考慮された。これに対し、弁護人は「被告人が暴力団構成員で…
事件番号: 昭和43(あ)41 / 裁判年月日: 昭和43年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼす法令の違反がある場合であっても、被告人の情状や事案の内容に照らし、宣告刑が不当に重いといえないときには、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。 第1 事案の概要:第一審判決は、被告人が日本刀2振を不法に所持した事実を認定しながら、本来適用すべき銃刀法31条…
事件番号: 昭和40(あ)2719 / 裁判年月日: 昭和41年6月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】第一審判決のうち、検察官が一部についてのみ控訴し、被告人が控訴しなかった場合、控訴されなかった部分は控訴期間の経過により確定する。したがって、控訴審が確定した部分についてまで審判を行うことは、係属していない事件を審理する違法がある。 第1 事案の概要:被告人に対し、第一審(山形地裁鶴岡支部)は、判…