判旨
銃砲刀剣類等所持取締法違反と火薬類取締法違反が観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、その旨の適用を欠いても、結果として重い方の罪の刑で処断していれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
数個の罪が観念的競合の関係にあるにもかかわらず、原判決が刑法54条1項前段を適用しなかった場合、その違法は判決の取消事由(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)となるか。
規範
複数の罪が観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、裁判所は同条を適用してその最も重い刑により処断すべきである。しかし、法令の適用において同条の適用を明示しなかったとしても、結果として刑法10条等に従い最も重い罪の刑によって処断していることが判決文上明らかであれば、その違法は判決に影響を及ぼすものとは認められない。
重要事実
被告人は、銃砲刀剣類等所持取締法違反および火薬類取締法違反の罪に問われた。第一審判決は、両罪の関係について刑法54条1項前段を適用すべき事案であったが、これを選択的に適用せず、単に刑法10条を適用して重い方の罪である銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑によって被告人を処断した。弁護人はこの点を判例違反として上告した。
あてはめ
本件において、第一審判決が銃砲刀剣類等所持取締法違反と火薬類取締法違反の間に刑法54条1項前段を適用しなかった点には法令適用の違法がある。しかし、判決文によれば、結果としては刑法10条を適用し、より刑の重い銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の刑で処断されている。そうであれば、観念的競合を明示したとしても結論において科される刑の範囲に変わりはなく、実質的に正当な刑の選択がなされているといえる。したがって、右の違法は判決に影響を及ぼすものではない。
結論
本件の法令適用の違法は判決に影響を及ぼさないため、上告は棄却される。
事件番号: 昭和40(あ)2167 / 裁判年月日: 昭和41年4月7日 / 結論: 棄却
原判決およびその是認する第一審判決が、第一審判示第四の拳銃二丁の所持につき銃砲刀剣類等所持取締法違反の包括罪に、実砲の所持につき火薬類取締法違反の罪に問擬し、両者を一個の行為にして数個の罪名にふれるものであるとした判示は正当である。
実務上の射程
罪数判断において観念的競合とすべきを併合罪としたり、条文の引用を欠いたりした場合でも、最終的に選択された刑の枠組みが重い方の罪の法定刑の範囲内であれば、判決に影響を及ぼす違法(刑訴法379条、411条等)とはならないとする実務上の判断基準を示している。
事件番号: 昭和43(あ)244 / 裁判年月日: 昭和44年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第一審判決を破棄して自ら有罪判決を宣告する場合、独自の判断により量刑を行うことができる。その際、控訴趣意に含まれる量刑不当の主張に対して個別の判断を示さなくても違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人Bの第一審判決につき、控訴審(原審)は法令違反があるとしてその全部を破棄した。控訴審は…
事件番号: 昭和49(あ)1757 / 裁判年月日: 昭和49年11月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑において被告人の前科・前歴を考慮することは、直ちに憲法14条(法の下の平等)や39条(二重処罰の禁止)に抵触するものではなく、過度な考慮がなされない限り適法である。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴され、下級審において有罪判決を受けた際、その量刑において被告人の有する前科および前歴…
事件番号: 昭和57(あ)1721 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が暴力団構成員であることをもって直ちに量刑上不利益な差別的処遇をすることは許されないが、当該属性を考慮したとしても直ちに憲法14条に反する不当な差別には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が暴力団の構成員であるという事実が量刑において考慮された。これに対し、弁護人は「被告人が暴力団構成員で…