判旨
犯人に対する処罰は各犯罪および犯人ごとに特別予防および一般予防の要請に基づき決定されるものであり、他の犯人と処罰の重さが異なることがあっても、直ちに憲法14条1項の法の下の平等に違反するものではない。
問題の所在(論点)
刑事裁判における量刑の不均衡が、憲法14条1項の規定する法の下の平等に違反するか。
規範
憲法14条1項の法の下の平等とは、合理的理由のない差別を禁止する趣旨である。刑事罰の量定においては、各犯罪の性質や犯人の情状に基づき、特別予防(再犯防止)および一般予防(社会秩序維持)の観点から個別に妥当な処置を講ずべきものである。したがって、犯情の一部が他の犯人と類似していても、個別の事案に応じた処罰の差異が生じることは当然に許容される。
重要事実
被告人は火薬類取締法違反等の罪に問われ、有罪判決を受けた。被告人側は、本件の犯情が他の同種事案の犯人と類似しているにもかかわらず、被告人に対してより重い刑を科すことは、憲法14条が定める平等原則に反する不当な差別的処遇であると主張して上告した。
あてはめ
刑事罰は、単に事実関係の一部が類似していることのみをもって一律に決定されるものではない。本件においても、裁判所は刑罰の目的である特別予防および一般予防の要請に鑑み、被告人個別の事情を考慮して刑を量定している。このような刑事司法の仕組みに基づく処罰の差異は、憲法14条が禁じる人種、信条、性別等に基づく「差別的処遇」には該当せず、合理的な裁量の範囲内にあると評価される。
結論
被告人を他の類似事案の犯人より重く処罰したとしても、憲法14条の原則に違反するものではない。上告棄却。
実務上の射程
事件番号: 昭和57(あ)1721 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が暴力団構成員であることをもって直ちに量刑上不利益な差別的処遇をすることは許されないが、当該属性を考慮したとしても直ちに憲法14条に反する不当な差別には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が暴力団の構成員であるという事実が量刑において考慮された。これに対し、弁護人は「被告人が暴力団構成員で…
量刑不当を憲法違反の問題(平等権侵害)として構成しようとする主張に対する反論として機能する。被告人ごとの個別相対的な事情(特別予防・一般予防)に基づく差異は合理的な差別であるとする、量刑判断における広範な裁量を認める射程を有する。
事件番号: 昭和49(あ)1757 / 裁判年月日: 昭和49年11月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑において被告人の前科・前歴を考慮することは、直ちに憲法14条(法の下の平等)や39条(二重処罰の禁止)に抵触するものではなく、過度な考慮がなされない限り適法である。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴され、下級審において有罪判決を受けた際、その量刑において被告人の有する前科および前歴…
事件番号: 昭和42(あ)130 / 裁判年月日: 昭和42年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締法違反と火薬類取締法違反が観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、その旨の適用を欠いても、結果として重い方の罪の刑で処断していれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲刀剣類等所持取締法違反および火薬類取締法違反の罪に問われた。第一審…