判旨
判決言渡日に施行された改正刑法を適用せず、旧法を適用して併合罪の処理を行ったことは法令の適用誤りにあたるが、原判決を破棄しなくても著しく正義に反するとまではいえない場合には、刑訴法411条による職権破棄を要しない。
問題の所在(論点)
判決言渡日に施行された改正刑法の不適用という法令違反が存在する場合、刑訴法411条に基づき職権で原判決を破棄すべきか。
規範
刑訴法411条柱書は、上告理由がない場合であっても、一定の事由があることにより「原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるとき」に限り、職権で原判決を破棄することができると規定する。法令の適用に誤りがある場合であっても、事案の性質、不利益の程度、処断刑の範囲等を総合考慮し、原判決を維持することが正義の観念に照らして耐え難い程度に達していないのであれば、破棄を要しない。
重要事実
被告人は複数の罪に問われ、原判決が言い渡された当日、併合罪の規定に関する刑法45条の改正法(昭和43年法律第61号)が施行された。しかし、原裁判所は新法を適用せず、改正前の刑法45条を適用して3個の懲役刑を科した。弁護人は上告したが、適法な上告理由(刑訴法405条)を具備していなかったため、最高裁が職権により原判決の法令違反の有無と破棄の必要性を検討した。
あてはめ
本件において、原判決が改正後の刑法45条を適用せず旧法に基づき3個の懲役刑を科したことは、法令の適用を誤ったものであり、判決に影響を及ぼすべき法令違反に該当する。しかし、本件事案の内容や宣告された刑の内容を考慮すると、新法適用による有利な結果と比較しても、旧法による処断が直ちに著しく不当であるとはいえない。したがって、原判決を破棄してまで自判や差し戻しを行う必要性は低く、「著しく正義に反するもの」とは認められない。
結論
法令の適用に誤りはあるが、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められないため、本件上告を棄却する。
事件番号: 昭和43(あ)41 / 裁判年月日: 昭和43年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼす法令の違反がある場合であっても、被告人の情状や事案の内容に照らし、宣告刑が不当に重いといえないときには、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。 第1 事案の概要:第一審判決は、被告人が日本刀2振を不法に所持した事実を認定しながら、本来適用すべき銃刀法31条…
実務上の射程
司法試験においては、上告理由がない場合における最高裁の職権破棄の裁量を論じる際に活用できる。判決に影響を及ぼす法令違反があったとしても、直ちに破棄されるわけではなく、正義の観点からの絞り込みがなされることを示す素材となる。
事件番号: 昭和43(あ)244 / 裁判年月日: 昭和44年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第一審判決を破棄して自ら有罪判決を宣告する場合、独自の判断により量刑を行うことができる。その際、控訴趣意に含まれる量刑不当の主張に対して個別の判断を示さなくても違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人Bの第一審判決につき、控訴審(原審)は法令違反があるとしてその全部を破棄した。控訴審は…
事件番号: 昭和25(あ)1822 / 裁判年月日: 昭和27年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法411条は上告裁判所が職権で原判決を破棄できる事由を定めた規定であり、当事者が主張すべき適法な上告理由を定めたものではない。したがって、同条に基づく主張は実質的に量刑不当等の非難にすぎない場合、刑訴法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cおよびそれぞれの弁護人…
事件番号: 昭和25(あ)1217 / 裁判年月日: 昭和26年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法411条は、上告理由を定めたものではなく、最高裁判所が職権によって原判決を破棄できる事由を定めた規定である。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法違反等の罪で起訴され、第一審および控訴審で有罪判決を受けた。弁護人は上告審において、第一審判決の併合罪(刑法47条)の適用に関し、どの罪を最も重い…
事件番号: 昭和49(あ)1757 / 裁判年月日: 昭和49年11月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑において被告人の前科・前歴を考慮することは、直ちに憲法14条(法の下の平等)や39条(二重処罰の禁止)に抵触するものではなく、過度な考慮がなされない限り適法である。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴され、下級審において有罪判決を受けた際、その量刑において被告人の有する前科および前歴…