判旨
裁判所は、事実認定の基礎となる証拠の選択及びその評価、並びに審理の範囲及び限度について、裁判所の広範な裁量を認めている。
問題の所在(論点)
裁判所が特定の証拠を排斥し、他の証拠に基づいて事実認定を行うことの妥当性、および事実審における審理の範囲・限度の決定に関する裁判所の裁量の有無が問題となった。
規範
刑事訴訟において、提出された証拠のうちからどの証拠を採用し、どの証拠を排斥するかという証拠の取捨選択、及び証拠の証明力の評価は、裁判所の自由な判断に委ねられる。また、事案の解明のためにどの程度の審理を行うべきかという審理の範囲や限度についても、基本的には事実審裁判所の裁量に属する。
重要事実
被告人らが特定の場所・日時において被害者Bに対し暴行を加え、傷害を負わせたとして起訴された事案である。第一審および原審は、司法警察官作成の聴取書(Aの供述)、公判調書(Bの供述)、および医師作成の診断書に基づき有罪と認定した。これに対し弁護人は、公判廷におけるAやBの別の供述に基づけば無罪であるべきであり、また審理不尽の違法があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決が採用した証拠(聴取書、公判調書、診断書)によれば、被告人らによる暴行および傷害の事実は十分に認定可能である。弁護人が主張する無罪の根拠となる供述は、原判決が証拠として採用しなかったものに過ぎず、これは事実審の専権事項である。また、審理の範囲や限度をどのように設定するかは事実審の裁量であり、既存の証拠で事実認定が可能な以上、審理不尽の違法は認められない。
結論
事実認定および審理の範囲の決定は裁判所の裁量に属する事項であり、原判決の判断に違法はないとして、上告を棄却した。
実務上の射程
実務上、証拠の取捨選択が「自由心証主義」の枠内にあることを示す極めて簡潔な例。答案上は、裁判所が特定の証拠を採用しなかったことの不当性を争う場面で、自由心証の限界や審理不尽を主張する際の前提(裁判所の基本的裁量権)として引用し得る。
事件番号: 昭和25(れ)1938 / 裁判年月日: 昭和26年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定の違法を理由とする上告について、原判決の掲げる証拠によって判示事実を認定したことが是認できる場合には、証拠によらずに事実を認定したという違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が原判決について、証拠に基づかずに事実を認定した違法(旧刑訴法下の事実誤認または証拠法則違反)があるとして上…