一 被告人及び原審相被告人Aが逮捕され更に勾留状によつて身体の自由を拘束されてから所論檢事の聽取書が作成されるに至る迄に八〇餘日を經過していることは所論の通りである。しかし記録によれば、被告人等兩人は逮捕されて十余日後における司法警察官の取調に對して犯罪事實を自供しているのであつて、所論檢事の聽取書の兩名の自白は右司法警察官に對する自供を單に繰り返したのにとどまり、本件事案は大阪府と香川縣とに亘つて行われた犯罪にかかるもので、その犯行數も強盜傷人一件、強盜二件、同豫備一件、窃盜三四件、鉄砲不法所持一件の多種、多數に上り、しかも犯人は被告人の他に共犯者五名を數え、各犯行は二名乃至六名が各共謀し、昭和二二年九月一六日頃から翌年三月1日頃迄の間に敢行されたものであるから、本案件の捜査に所論の期間程度の日子が必要であつたことはたやすく肯定されるところである。されば、所論の被告人等の檢事に對する自白をもつて、所論のように不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白であるということはできないから、(昭和二二年(れ)第三〇號同二三年二月六日大法廷判決、判例集第二卷第二號第一七頁參照)原審が所論被告人等の自白を證據としたからといつて原判決には所論の違法は存しない。 二 原判決は本件強盜傷人罪の構成要件の一部たる所論共同謀議の點のみを所論被告人等の檢事に對する自白で認定したのであつて、かかる犯罪事實の一部を被告人の自白のみで認定しても違法でないことは當裁判所の判例の趣旨とするところである(昭和二三年(れ)九四七號同年一〇月二一日第一小法定判決判例集第二卷第一三六六頁參照)
一 逮捕拘禁八〇餘日後の自白と憲法第三八條第二項 二 共謀の事實を被告人の自白のみで認定することの正否
憲法38條2項,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條2項,刑訴應究措置法10條3項,刑法60條
判旨
強盗の共謀をした者は、実行行為を分担せず見張りをしたに過ぎない場合でも強盗傷人の共同正犯としての罪責を負う。また、多数の共犯者が関与し、広範囲で多数の犯行が行われた事案において、逮捕から80余日後の自白であっても、捜査の必要性が認められる限り不当に長い拘禁後の自白とはいえない。
問題の所在(論点)
1.強盗の共謀に関与しながら見張り行為のみを行った者に強盗傷人の共同正犯が成立するか。2.多数の余罪と共犯者が存在する複雑な事案において、逮捕から約80日後の自白が「不当に長い拘禁後の自白」として証拠能力を否定されるか。3.共同謀議の事実を被告人の自白のみで認定できるか。
規範
1.強盗の共謀をした者は、暴行、脅迫、強取等の実行行為を自ら行わない場合であっても、共謀者のした強盗傷人の犯罪行為について共同正犯としての罪責を免れない。2.憲法38条2項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」にあたるかは、事案の性質、犯行の数、共犯者の人数等に照らし、その捜査に要した期間の合理性を考慮して判断する。3.補強証拠を必要とする自白には、犯罪事実の一部(共同謀議等)のみを認定する根拠となる自白も含まれるが、自白のみで犯罪事実の全部を認定することは許されない(反面、犯罪事実の一部を自白で認定することは可能である)。
重要事実
被告人B及びDらは、他の共犯者らと強盗の共謀を遂げた。Bは強盗傷人の際、被害者宅の便所横で見張りをしていたが、直接の暴行や強取は行わなかった。また、本件は大阪府と香川県にわたる広域犯行であり、強盗傷人1件、強盗2件、窃盗34件など多種多数の犯行を含み、共犯者も計6名に及んだ。被告人らは逮捕・勾留から約80余日が経過した後に検察官に対して自白したが、逮捕後10余日の時点で既に警察官に対し同旨の自白をしていた。
あてはめ
1.被告人Bは他の5名と強盗の共謀をしており、見張りをしていた事実は判示の証拠から明白である。共謀に基づく役割分担がある以上、直接の実行行為がなくとも強盗傷人罪の共同正犯が成立する。2.本件は大阪・香川の両府県にまたがる広域事件であり、犯行数も40件近くに上り、共犯者も多数である。このような複雑な事案の捜査に80余日を要したことは合理的な必要性があると認められ、不当な拘禁とはいえない。また、既に逮捕直後に自白がなされている点からも、拘禁による不当な心理的圧迫の結果とは評価できない。3.犯罪事実の一部である共同謀議の点について被告人の自白を用いて認定することは、法の許容するところである。
結論
1.見張り役であっても強盗傷人罪の共同正犯が成立する。2.本件の自白は証拠能力を有し、これに基づいて共同謀議等の事実を認定した原判決に違法はない。
実務上の射程
共謀共同正犯における見張り行為の評価および、憲法38条2項・刑訴法319条1項の「不当に長い拘禁」の判断基準を示す。特に余罪多数の複雑事案における捜査期間の合理性を肯定する際の考慮要素として有用である。また、自白の補強法則(憲法38条3項)との関係で、自白により認定できる事実の範囲についても示唆を与えている。
事件番号: 昭和24(れ)369 / 裁判年月日: 昭和24年5月24日 / 結論: 棄却
しかし、強盜犯人と意思連絡のもとに見張等をした者は、右共犯者の行爲を利用して自己の犯意を實現したものであつて、共同正犯にほかならぬこと、當第三小廷にもその判例がある。(昭和二三年(れ)第三五一號、同年七月二〇日判決)
事件番号: 昭和24(れ)1090 / 裁判年月日: 昭和24年8月18日 / 結論: 棄却
一九四六年二月一九日附朝鮮人その他の國人に對し科せらた判決の再審査に關する覺書に從い被告人等は日本裁判所の確定判決について連合國最高司令官又は第八軍司令官に對し、再審査を請求する權利のあることは所論のとおりであるが原判決言渡しの際被告人等に對し、その請求權のあることを告知すべき義務を原審に負擔せしめる趣旨の規定は前示覺…