一九四六年二月一九日附朝鮮人その他の國人に對し科せらた判決の再審査に關する覺書に從い被告人等は日本裁判所の確定判決について連合國最高司令官又は第八軍司令官に對し、再審査を請求する權利のあることは所論のとおりであるが原判決言渡しの際被告人等に對し、その請求權のあることを告知すべき義務を原審に負擔せしめる趣旨の規定は前示覺書には勿論いかなる法令にも存在しないのであるから、原審が被告人等に右請求權のあることを告知しなかつたからといつて原判決にはいささかの違法もない。
判決言渡の際朝鮮人その他の國人に日本裁判所のなした確定判決について連合國最高司令官、又は、第八軍司令官に對する再審査請求權の存否を告知することの要否
舊刑訴法369條
判旨
不当に長い抑留又は拘禁後の自白(刑訴法319条1項)に該当するか否かは、抑留・拘禁の期間のみならず、事件の複雑性や共犯者の状況、取調べの経過等の諸事情を総合して判断すべきである。本件では、複雑な併合事件において抑留後約2ヶ月で自白がなされた等の事情から、不当に長い拘禁後の自白には当たらないとされた。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法第319条1項(旧刑訴応急措置法10条2項)にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」の意義、及び複雑な共犯事件において勾留後約2ヶ月でなされた自白がこれに該当するか。
規範
「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」に該当するか否かは、単に拘束期間の長短のみで機械的に判断されるものではない。事件の性質(内容の複雑多岐性)、被疑者の人数や共犯関係、審理に要する手数の多寡、及び実際の供述がなされるまでの経緯等を総合的に考慮し、その拘禁が当該事案において「不当」といえるかという観点から判断すべきである。
重要事実
被告人Aは、窃盗及び窃盗未遂等の事実で他の共犯者らと共に起訴された。Aが勾留されたのは昭和22年2月27日であり、その後、同年4月18日に予審判事に対して自白と同旨の供述を行っている(勾留から約2ヶ月弱)。本件は、Aと共犯関係にある数名が、さらに別の者と共犯にかかる強盗、強盗傷人、公務執行妨害等の事件と併合して審理されており、第一審の被告人数は9名に上り、他にも逃亡中の共犯者が数名存在する複雑な事件であった。
事件番号: 昭和24(れ)349 / 裁判年月日: 昭和28年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」とは、拘禁と自白との間に因果関係があることを要し、因果関係がないことが明らかな自白は含まれない。また、病状があっても審理に耐え得ると認められる限り、公判手続を停止しないことは適法である。 第1 事案の概要:被告人は強盗容疑で逮捕・勾留され、約11…
あてはめ
まず、被告人Aが最初の供述を行ったのは勾留から2ヶ月足らずの時点であり、期間そのものが直ちに不当に長いとは断じがたい。次に、本件は被告人が9名に及び、さらに逃亡中の共犯者も存在するなど、事件の内容が極めて複雑多岐にわたっている。このような事案の特殊性に鑑みれば、事件の審理や真相解明に多大の手数を要することは不可避である。したがって、本件における拘禁の期間は、事案の性質に照らして合理的な範囲内にとどまるものであり、自白の任意性を疑わせるような「不当」な拘禁状態があったとは認められない。
結論
被告人の自白は「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」には該当せず、証拠能力が認められる。
実務上の射程
自白の証拠能力(任意性)に関する判断枠組みとして、拘禁期間の「不当性」を事案の複雑性等の具体的状況から相対的に判断する手法を示している。実務上、共犯者が多い組織犯罪や複雑な経済事件等において、勾留期間が長期化した場合の証拠能力争いで引用され得る。
事件番号: 昭和23(れ)567 / 裁判年月日: 昭和23年10月16日 / 結論: 棄却
一 朝鮮人は、連合國人に屬せず、日本在住の朝鮮人は日本刑法の適用を受け、日本の裁判權に服するものであることは、昭和二一年六月一三日、勅令第三一一號及び一九四六年一月三一日附連合國最高司令部發日本帝國政府宛「連合國、中立國及ビ敵國ノ定義ニ關スル覺書」並びに刑法第一條第八條の趣旨に徴し明瞭である。 二 朝鮮人に對する日本の…
事件番号: 昭和23(れ)1462 / 裁判年月日: 昭和24年10月5日 / 結論: 破棄自判
一 憲法第三八條第二項及刑訴應急措置法第一〇條第二項の不當に長い抑留又は拘禁というのは抑留又は拘禁の期間が不當に長い場合をいうのであつて抑留又は拘禁が不當であることをいうものではない。從つて論旨にいうように勾留が不當であるということだけでは自白を證據能力なきものにするものではなくなお公判廷における自白は右各法條の第三項…