一 犯人の處罰は、憲法第一四條にいわゆる人種、信條、性別、社會的身分又は門地による差別的處遇ではなく、特別豫防の要請に基いて各犯罪各犯人毎に妥當な處置を講ずるのであるから、その處遇の異ることのあるべきは當然である。事實審たる裁判所は、犯人の性格、年齡及び境遇並に犯罪の情状及び犯罪後の情況等を審査してその犯人に適切妥當な刑罰を量定するのであるから、犯情の或る面において他の犯人に類似した犯人であつてもこれより重く處罰せられることのあるのは理の當然であり、これを目して憲法第一四條の規定する法の平等の原則に違反するということはできない。 二 記録によれば、被告人は昭和二二年五月一〇日逮捕され同月一二勾留されて以來拘禁されているのであるが、所論の檢察官の聽取書は昭和二二年五月一九日に作成されたものであるから右の聽取書記載の供述は拘禁と自白の日時の近接からみて、もとより不當に長く拘禁された後の自白でないことは明らかである。
一 犯情の類似した犯人間の處罰の差異と憲法第一四條第一項 二 逮捕拘禁一〇日後の自白と不當に長く拘禁された後の自白
憲法14条1項,憲法37條2項,刑訴應急措置法10條2項
判旨
不当な拘禁後の自白(憲法38条2項等)の該当性は、拘禁開始から自白までの期間や自白の内容、供述の変遷等を総合して判断される。また、個別の犯情等に基づき他の犯人と異なる刑罰を科すことは、憲法14条の法の下の平等に反しない。
問題の所在(論点)
逮捕・勾留から一定期間経過後になされた供述が「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」(憲法38条2項、刑訴法319条1項)として証拠能力を否定されるか。また、個別の量刑の差異が憲法14条に違反するか。
規範
「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」に該当するか否かは、拘禁の期間のみならず、拘禁と自白の日時の近接性、自白に至る経緯、自白の内容(全面的なものか一部不利益事実か)、前審からの供述の変遷、及び事案の性質(集団犯か否か等)を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
被告人は昭和22年5月10日に逮捕、12日に勾留された。同月19日に検察官聴取書が作成され、昭和23年1月19日の原審公判では、第一審の全面的自白を翻しつつも、犯行現場付近へ行ったことや被害物品の持ち出し等の不利益な事実を認める供述をした。事案は数名の共犯者による4回の集団強盗であった。弁護人は、これが不当に長い拘禁後の自白にあたり、かつ他の犯人より重く処罰されることは平等原則に反すると主張した。
あてはめ
まず、5月12日の勾留から7日後の同月19日に作成された聴取書は、日時が近接しており「不当に長く拘禁された後」とはいえない。次に、約8か月後の原審公判供述についても、それが全面的な自白ではなく一部の不利益事実に留まること、第一審の自白を翻したものであること、さらに4回の集団強盗という複雑な事案であることに鑑みれば、拘禁の継続によって虚偽自白を誘発するような不当な状況下になされたものとは認められない。また、量刑は犯人の性格、境遇、情状等を審査して決定されるものであり、類似の犯情であっても個別の事情により差異が生じるのは当然であって、差別的処遇にはあたらない。
結論
本件各供述は不当な拘禁後の自白には当たらず、証拠能力が認められる。また、他の犯人との量刑の差異も憲法14条に違反しない。
実務上の射程
自白の証拠能力に関する判断において、単なる期間の長短だけでなく、事案の複雑性や供述の態様を総合考慮する実務の枠組みを示したものである。憲法14条については、個別的な量刑の合理的な差異を肯定する根拠として引用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1339 / 裁判年月日: 昭和24年10月25日 / 結論: 棄却
一 記録に徴するに、原判決において證據に舉示した原審公判における被告人A同B同Cの供述は、何れも保釋により身柄を釋放されてより約一年一〇ケ月後の公判期日に出廷し自由且つ任意に供述したものである、そして被告人等自白の經過を見るに、被告人Aは昭和二一年九月三日豫審第三回訊問において犯行を自白してより其後同年一一月二一日の豫…