一 被告人兩名が警察で身柄を拘束されたのは昭和二二年一月一四日であつて同年三月一三日に豫審第一回訊問がされているその間檢事局を經て引續き拘束されていたと推測されるけれども、その期間は五九日であるがこの種強盜被疑事件としては、右の期間は決して不當に長いとは認められない。 二 原審において辯護人が警察における拷問若しくは脅迫の事實を明らかにするためAの證人申請をしたにも拘わらず却下されたとしても、原判決は警察における兩被告人の各聽取書を證據として採用していないのであるから採證法上の違反はない、それ故論旨は理由がない。 三 刑訴應急措置法第一二條第一項は必ずしも同條に基いて訊問された證人の供述を證據として採用しなければならないという趣旨の規定ではないのであるから、原審がかかる證據を採用せずして他の證據を採用したのは事實審の專權に屬する事項である。原審の採證には何等違法はない。
一 五九日の拘束と憲法第三八條第二項の「不當に長い拘禁」 二 證據に採用しなかつた聽取書の供述者に對する證人訊問の申請を却下した場合と採證法違反の主張 三 刑訴應急措置法第一二條第一項の法意
憲法38條2項,刑訴應急措置法10條2項,刑訴應急措置法12條,刑訴應急措置法12條1項,舊刑訴法344條1項,舊刑訴法337條
判旨
不当に長い拘禁や拷問・脅迫があったとしても、後の供述がその影響下になされたと認められない限り、当該自白の証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
不当に長い拘禁や、警察段階での拷問・脅迫があったとされる場合、その後の予審段階でなされた自白の証拠能力(任意性)は認められるか。
規範
自白の任意性に疑いがある場合、その証拠能力は否定される。不当に長い拘禁後の自白、あるいは拷問・脅迫等の強制手段が用いられた後の自白については、前後の状況を総合し、当該自白がそれら不当な干渉の直接の結果としてなされたものか、あるいはその影響が継続しているといえるかによって判断すべきである。
重要事実
被告人両名は強盗の被疑事実で警察に身柄拘束され、59日後に予審判事による第一回訊問を受けた。その際、被告人らは本件犯行を自白した。被告人らは公判において、警察段階で拷問や脅迫を受けた旨を主張し、予審での自白は不当に長い拘禁や右脅迫の影響下にあるため証拠能力がないと争った。
あてはめ
まず、59日間の拘禁について、強盗事件の性質に照らせば不当に長いとは認められない。また、被告人らは拘禁後1ヶ月余の時点で既に自白しており、予審での自白が長期拘禁を原因とするものとは考え難い。次に、仮に警察で拷問等の事実があったとしても、予審の場では何ら強制が加わった形跡はない。予審における供述内容自体にも、警察での拷問等に影響されている痕跡は認められないため、任意性が認められる。
結論
予審における自白は、不当な拘禁や警察での拷問等の影響下になされたものとはいえず、証拠能力を有する。
実務上の射程
自白の任意性に関する「反復自白」の事案において、先行する不当な取調べの影響が遮断されているかを判断する際の基準として活用できる。特に、取調べ主体や場所の変化(警察から予審・検察)が影響遮断の一要因となり得ることを示唆している。
事件番号: 昭和23(れ)497 / 裁判年月日: 昭和23年9月18日 / 結論: 棄却
一 かりに原判決が證據とした原審公判における被告人の自白前の拘禁が不當に長いものであるとしても、被告人は本件犯行については、拘禁後四〇餘日を經た豫審の取調べにおいて、すでに自白をしているのであり、更にその後七〇餘日を經た第一審公判においても同樣自白をしているのであつて、この程度の期間の拘禁は、前述の事情等からみて不當に…