一 憲法第三八條第二項及刑訴應急措置法第一〇條第二項の不當に長い抑留又は拘禁というのは抑留又は拘禁の期間が不當に長い場合をいうのであつて抑留又は拘禁が不當であることをいうものではない。從つて論旨にいうように勾留が不當であるということだけでは自白を證據能力なきものにするものではなくなお公判廷における自白は右各法條の第三項の「自白」に該當しないことはいずれも當裁判所の判例とするところであつて今なおこれが變更の要を見ない。 二 原審が認定した被告人の各住居侵入の行爲を罰する趣旨であることは判文上明である。しかるにこれに對して其適用條文を示して居ないことは所論の通りであつて、此點において原判決は理由不備の違法があり論旨は理由がある。しかして右違法は舊刑事訴訟法第四四八條の二第四五〇條所定の場合に屬しないから同法第四四七條第四四八條によつて原判決を破毀し、原審の確定した事實に基き當裁判所において被告事件に付いて更に判決を爲すべきものである。
一 憲法第三八條第二項、刑訴應急措置法第一〇條第二項の不當に長い抑留又は拘禁の意義と公判廷における自白 二 住居侵入の所爲を罰する趣旨であること明かな場合でありながらその適用法條を明示しない判決の違法と舊刑訴法第四四八條の二同第四五〇條に該らぬ場合
憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項,舊刑訴法410條19號,舊刑訴法448條の2,舊刑訴法450條,舊刑訴法447條,舊刑訴法448條
判旨
憲法38条2項にいう「不当に長い抑留又は拘禁」とは、抑留・拘禁の期間自体が不当に長い場合を指し、勾留手続の不当性のみをもって直ちに自白の証拠能力が否定されるものではない。
問題の所在(論点)
勾留手続の不当性が、憲法38条2項(及び刑訴応急措置法10条2項)にいう「不当に長い抑留又は拘禁」に該当し、自白の証拠能力を否定する理由となるか。
規範
憲法38条2項及び刑事訴訟法上の「不当に長い抑留又は拘禁」とは、抑留又は拘禁の『期間』が不当に長い場合を指す。したがって、勾留の理由や手続が不当であるという事由のみでは、直ちに自白の証拠能力を否定する根拠とはならない。
事件番号: 昭和22(れ)332 / 裁判年月日: 昭和23年7月14日 / 結論: 棄却
一 犯罪事實は、強盜殺人、死體遺棄、恐喝、強盜及び窃盜という各種の犯行に亘り、共犯者は常に四名、九名、一三名という多數にのぼり、該共犯者の中には英占領軍兵士五名乃至七名が加擔しており又被害者の中には朝鮮人も含まれており、罪質は重く事件としては非常に複雜を極めているものと認めなければならない。從つて、その取調及び審理に甚…
重要事実
被告人は強盗致死、強盗傷人、住居侵入等の罪で起訴された。弁護人は、被告人に対する勾留が不当であり、その不当な拘束下で得られた自白は、憲法38条2項の「不当に長い抑留又は拘禁」後の自白に該当し、証拠能力が認められないと主張して上告した。
あてはめ
憲法38条2項が禁止する自白の証拠能力排除事由は、身柄拘束の『期間』の不当性に着目したものである。本件において弁護人が主張する事由は、勾留の態様が不当であるという点に留まり、期間の長さを問題にするものではない。よって、本件の身柄拘束が直ちに同条項にいう不当な抑留・拘禁に当たるとはいえず、自白の証拠能力は否定されない。
結論
勾留が不当であることのみでは自白の証拠能力は失われず、上告は採用されない(なお、原判決は理由不備を理由に破棄されたが、最高裁の自判により死刑が言い渡された)。
実務上の射程
自白の証拠能力に関する論点で、違法な身柄拘束下での自白の取扱いを論じる際、「不当に長い抑留・拘禁」の意義(期間説)を明確にするために引用する。実務上は、憲法38条2項の文言を厳格に解釈する立場を示す重要な判例である。
事件番号: 昭和26(れ)767 / 裁判年月日: 昭和26年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項後段が禁じる「不当に長い抑留若しくは拘禁後の自白」とは、身柄拘束と自白との間に因果関係が認められる場合を指す。したがって、身柄拘束と自白との間に因果関係がないことが明らかな場合には、当該自白を証拠とすることは憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aは勾留後10日で保釈されたが、…
事件番号: 昭和24(れ)349 / 裁判年月日: 昭和28年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」とは、拘禁と自白との間に因果関係があることを要し、因果関係がないことが明らかな自白は含まれない。また、病状があっても審理に耐え得ると認められる限り、公判手続を停止しないことは適法である。 第1 事案の概要:被告人は強盗容疑で逮捕・勾留され、約11…
事件番号: 昭和23(れ)567 / 裁判年月日: 昭和23年10月16日 / 結論: 棄却
一 朝鮮人は、連合國人に屬せず、日本在住の朝鮮人は日本刑法の適用を受け、日本の裁判權に服するものであることは、昭和二一年六月一三日、勅令第三一一號及び一九四六年一月三一日附連合國最高司令部發日本帝國政府宛「連合國、中立國及ビ敵國ノ定義ニ關スル覺書」並びに刑法第一條第八條の趣旨に徴し明瞭である。 二 朝鮮人に對する日本の…