一 犯罪事實は、強盜殺人、死體遺棄、恐喝、強盜及び窃盜という各種の犯行に亘り、共犯者は常に四名、九名、一三名という多數にのぼり、該共犯者の中には英占領軍兵士五名乃至七名が加擔しており又被害者の中には朝鮮人も含まれており、罪質は重く事件としては非常に複雜を極めているものと認めなければならない。從つて、その取調及び審理に甚だ手數を要すべきことは事理の當然であり又これを要したことは一件記録において明らかである。しかのみならず、被告A、B、Cの自白は何れも保釋中になされたものである。所論の自白が、憲法第三八條第二項にいわゆる「不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」に該當しない。 二 被告人が原審で證人として申請をした共犯者は既に第一審で訊問せられており、原審が取調の必要なきものと認めて却下したことは、別段違法となるへき理由もない。
一 審理に手數を要する複雜な事件につき保釋中なさした自白と憲法第三八條第二項にいわゆる「不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」 二 第一審で訊問された共犯者を第二審で證人として訊問の申請をなした場合その申請却下の當否
憲法38條2項,刑訴應急措置法第10條2項,刑訴法344條,刑訴法410條13號
判旨
憲法38条2項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」に該当するか否かは、身体拘束の期間のみならず、事件の複雑性、共犯者の多寡、取調及び審理の難易等の諸事情を総合して判断すべきである。
問題の所在(論点)
憲法38条2項の「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」の意義、及び複雑な多人数共犯事件において保釈中になされた自白が同規定に抵触するか。
規範
憲法38条2項の「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」とは、身体拘束の期間が、事件の性質や複雑性、取調及び審理に要する合理的な手間、被告人の身分状況(保釈の有無等)に照らし、正当な理由なく長期にわたる場合を指す。
重要事実
被告人らは、強盗殺人、死体遺棄、恐喝、強盗及び窃盗等の多岐にわたる犯行に及び起訴された。共犯者は4名から13名という多数にのぼり、その中には占領軍兵士が含まれ、被害者には外国人も含まれるという極めて複雑な事件であった。被告人A、B、Cは保釈中に自白をしたが、弁護人は当該自白が不当に長い拘禁後のものであると主張してその証拠能力を争った。
あてはめ
本件は多種多様な犯罪事実を含み、共犯者が多数かつ占領軍兵士が含まれる等、事件として非常に複雑である。このような場合、取調及び審理に多大な手数を要することは事理の当然であり、一件記録上も必要であったと認められる。さらに、被告人らの自白は保釈中になされたものである。これらを総合すれば、身柄拘束が正当な理由なく不当に長期間に及んでいたとは認められない。
結論
本件自白は憲法38条2項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」に該当せず、証拠能力を有する。
実務上の射程
自白の証拠能力(自白排除法則)に関する憲法上の判断枠組みを示す。単なる期間の長短だけでなく、事件の複雑性や審理の必要性という具体的状況から「不当性」を判断する手法は、刑事訴訟法319条1項の解釈としても重要である。
事件番号: 昭和24(れ)1339 / 裁判年月日: 昭和24年10月25日 / 結論: 棄却
一 記録に徴するに、原判決において證據に舉示した原審公判における被告人A同B同Cの供述は、何れも保釋により身柄を釋放されてより約一年一〇ケ月後の公判期日に出廷し自由且つ任意に供述したものである、そして被告人等自白の經過を見るに、被告人Aは昭和二一年九月三日豫審第三回訊問において犯行を自白してより其後同年一一月二一日の豫…
事件番号: 昭和23(れ)1462 / 裁判年月日: 昭和24年10月5日 / 結論: 破棄自判
一 憲法第三八條第二項及刑訴應急措置法第一〇條第二項の不當に長い抑留又は拘禁というのは抑留又は拘禁の期間が不當に長い場合をいうのであつて抑留又は拘禁が不當であることをいうものではない。從つて論旨にいうように勾留が不當であるということだけでは自白を證據能力なきものにするものではなくなお公判廷における自白は右各法條の第三項…