物價統制令はその第三條において「………價格等ハ其ノ統制額ヲ超エテ之ヲ契約シ、支拂ヒ又ハ受領スルオトヲ得ズ………」と規定し、その第三二條において、「三條ノ規定ニ違反シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ一〇萬圓以下ノ罰金ニ處スル」旨を規定しているのであるから、被告人が判示硫安を現實に引渡さなかつたからといつて、同令第三條にいわゆる統制價格を超えて之を契約し、代金を受領した事實が認められる以上、同條の違反罪は成立するものであつて、物の引渡をまつて成立するものでないから原審が被告人を同令第三三條に問擬したのを違法ということはできない。
物價統制令第三條にいわゆる「統制額を越えて之を契約し代金を受領した場合」に該る事例
物價統制令3條,物價統制令33條,物價統制令32條
判旨
物価統制令3条違反の罪は、統制額を超える価格で売買契約を締結し、または代金を受領することによって成立し、目的物の現実の引渡しを要しない。
問題の所在(論点)
物価統制令3条違反の罪(超過価格での取引)において、売買契約の締結および代金の受領が認められる一方で、目的物の引渡しが未了である場合、同罪の既遂が成立するか、それとも未遂にとどまるか。
規範
物価統制令3条(現行4条参照)は、価格等の統制額を超えて「契約し、支払い又は受領すること」を禁止している。したがって、同条違反の罪は、超過価格による契約の締結、または代金の支払・受領の事実があれば既遂に達し、売買の目的物たる現品の引渡しは犯罪成立の要件ではない。
重要事実
被告人は、共犯者との間で硫安(肥料)を統制価格(公定価格)を超える金額で売り渡す契約を締結し、その代金を受領した。しかし、対象となる硫安の現品については、1俵も現実には受渡しを行っていなかった。
あてはめ
本件において、被告人は統制価格を超過する金額での売渡し契約を締結し、かつその代金を受領したことが認定されている。同令3条の文言上、禁止行為は「契約」「支払」「受領」と規定されており、「引渡し」は列挙されていない。被告人の行為は「契約」および「受領」の各構成要件を完全に充足しているため、現品の引渡しという事後の履行行為が行われていないことは、犯罪の成立を左右しないと解される。
結論
被告人の行為には物価統制令3条違反罪が成立する。現品の引渡しがなくても既遂であり、未遂にはあたらない。
実務上の射程
行政刑法における挙動犯・形式犯的性質を持つ規定の解釈を示す。条文上の禁止行為(契約・受領)が行われれば、実質的な取引の完了(引渡し)を待たずに既遂となることを明確にしており、経済統制法規の厳格な適用を肯定する射程を持つ。
事件番号: 昭和26(れ)1343 / 裁判年月日: 昭和26年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令3条1項が禁止する「統制額を超えて価格等を契約すること」による違反罪は、契約の締結によって成立し、現実に代金を受領したか否かという現金決済の有無は犯罪の成否に影響しない。 第1 事案の概要:被告人は、A外27名に対し、自転車のタイヤおよびチューブ各22本を、当時の物価統制令に基づく統制額…