判旨
物価統制令3条1項が禁止する「統制額を超えて価格等を契約すること」による違反罪は、契約の締結によって成立し、現実に代金を受領したか否かという現金決済の有無は犯罪の成否に影響しない。
問題の所在(論点)
物価統制令3条1項に違反する罪の成否において、統制額を超過する代金の現実の受領(現金決済の有無)が構成要件として必要か。
規範
物価統制令3条1項本文の規定は、統制額を超過する価格等で契約を締結する行為自体を禁止している。したがって、同条違反の罪が成立するためには、統制額を超える価格による合意(契約の締結)があれば足り、実際にその価格を受領したこと(履行の完了)を要しない。
重要事実
被告人は、A外27名に対し、自転車のタイヤおよびチューブ各22本を、当時の物価統制令に基づく統制額を超過する代金で卸販売する契約を締結した。弁護側は、現金決済の事実が証拠上不明確である等として無罪を主張したが、原審は統制額超過価格での「販売(契約)」の事実を認定し、有罪とした。
あてはめ
本件被告人は、統制額を超えた価格で対象物品を卸販売する契約を締結している。同条項は「価格等ハ其ノ統制額ヲ超エテ之ヲ契約」することを禁じているところ、本件において認定された事実は「統制額を超えて価格等を受領した事実」ではなく「統制額を超過する代金で契約(卸販売)した事実」である。この契約の成立をもって同条項の禁止に触れるため、現実に現金決済が行われたか否かは、本件犯罪の成否を左右するものではないといえる。
結論
物価統制令違反の罪は契約締結時に成立し、現金決済の有無は犯罪の成否に関係しない。したがって、原判決の有罪認定は正当である。
実務上の射程
行政取締法規における「契約」を禁ずる規定の解釈において、履行(代金受領)を待たずに合意時点で既遂に達するという構成要件の形式性を明示したもの。現代の経済事犯や規制違反の事案においても、実行行為の着手や既遂時期を判断する際の参考となる。
事件番号: 昭和24(れ)2787 / 裁判年月日: 昭和25年3月9日 / 結論: 棄却
物價統制令はその第三條において「………價格等ハ其ノ統制額ヲ超エテ之ヲ契約シ、支拂ヒ又ハ受領スルオトヲ得ズ………」と規定し、その第三二條において、「三條ノ規定ニ違反シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ一〇萬圓以下ノ罰金ニ處スル」旨を規定しているのであるから、被告人が判示硫安を現實に引渡さなかつたからといつて、同令第三條にいわゆる…