判旨
物価統制令違反の罪が成立するためには、代金が不当に高価な額であることの認識があれば足り、統制額を具体的な数字によって認識している必要はない。
問題の所在(論点)
不当高価買受け罪の故意が認められるためには、法が定める統制額を具体的な数字として正確に認識している必要があるか、それとも不当に高価な額であることの認識で足りるか。
規範
物価統制令における不当高価買受け罪の成立には、買受けに係る価格が「不当に高価な額であること」の認識(故意)があれば足り、客観的な統制価格が具体的にいくらであるかという数字(法令上の上限額)までを詳細に認識していることは必要ではない。
重要事実
被告人は、物価統制令の定めに反し、不当に高価な額で物件を買い受けたとして、同令9条の2、34条違反に問われた。これに対し、被告人は、物件の具体的な統制額がいくらであるかという数字による認識を欠いていたとして、犯罪が成立しない旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において被告人は、買受け価格が不当に高価な額であることを認識しながら、あえて当該物件を買い受けた。第一審および原審は、証拠に基づきこの認識の事実を認定しており、この認定は正当である。統制額の具体的な数字を知らなくとも、その価格が適正な範囲を逸脱し、不当に高いものであると認識している以上、法の禁止する行為をあえて行う意思(故意)に欠けるところはないといえる。
結論
被告人が統制額を数字によって認識していなかったとしても、不当に高価な額であることの認識がある以上、物価統制令違反の罪は成立する。
実務上の射程
行政刑法や経済犯における故意の対象を考える際の参考となる。法令で定められた具体的数値そのものの認識ではなく、その数値を超えて不当であるという規範的・事実的な認識があれば故意が認められるとする判断枠組みは、現代の行政法規違反の事案にも応用可能である。
事件番号: 昭和26(れ)872 / 裁判年月日: 昭和26年9月20日 / 結論: 棄却
犯意の成立には違法の認識を必要としない。法律の不知又は誤解があつたとしても違法な行為をしたことになるから刑責を負うべきである。