物価統制令第九条の二いわゆる不当に高価なる額なりや否やは所論のごとき原価計算に依るべきではなく、取引当時若しくはその前後における同種又は類以の物資に対する法令、告示通による統制価格又は公正な普通一般の取引界における市場価格等を参酌した社会経済秩序維持の適正価格を標準とすべきものと解するを相当とする。されば、原判決がAの不当に買入れた値段をも参酌したことは妥当とは認め難いが、既に原判決が取引当時における同種の物資に対する判示販売業者販売価格の統制額を参酌して被告人の本件買入れを不当に高価であると認定しその認定が挙示の証拠に照し肯認される以上その認定には経験則に反する違法があるとはいえない。
物価統制令第九条の二にいわゆる「不当高価額」の認定と実験則
物価統制令9条の2,旧刑訴法336条
判旨
物価統制令9条の2にいう「不当に高価なる額」とは、原価計算に基づくべきではなく、統制価格や市場価格等を参酌した社会経済秩序維持の適正価格を標準として判断すべきである。
問題の所在(論点)
物価統制令9条の2における「不当に高価なる額」の意義およびその判断基準。
規範
物価統制令9条の2の「不当に高価なる額」にあたるか否かは、同令が社会経済秩序の維持および国民生活の安定を目的とする(同令1条)ことに鑑み、単なる原価計算によるのではなく、取引当時またはその前後における同種・類似物資の統制価格(法令・告示等)や、公正な普通一般の取引界における市場価格等を参酌した「社会経済秩序維持の適正価格」を標準とすべきである。
重要事実
被告人が物資を買い入れた行為について、物価統制令9条の2違反(不当高価買入れ)が問われた。原審は、被告人による本件買入れを不当に高価であると認定するに際し、販売業者の販売価格の統制額に加え、他の者の不当な買入れ価格をも参酌して判断していた。これに対し、弁護側は原価計算に基づくべきである等として上告した。
あてはめ
本件において、原審が他の者の不当な買入れ価格を参酌した点は妥当とは言い難い。しかし、原審は同時に、取引当時における同種物資の販売業者販売価格の統制額を参酌しており、この点は適正価格を標準とする判断に沿うものである。したがって、当該統制額を基準として被告人の買入れを不当に高価であると認定した判断に、経験則違反や物価統制令の適用誤りがあるとはいえない。
結論
本件買入れは不当に高価なる額によるものと認められ、物価統制令9条の2に違反する。上告棄却。
実務上の射程
行政法規の定める抽象的な価格基準について、単なる私的な原価の積み上げではなく、統制価格や一般の市場価格といった客観的・社会的指標を基準に判断すべきことを示した。経済犯罪における価格の正当性判断に際し、行政目的に沿った「適正価格」の概念を用いる際の指針となる。
事件番号: 昭和25(れ)1311 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令9条の2にいう「不当に高価なる額」とは、同種又は類似物資の統制価格を参酌し、社会経済秩序維持の観点から適正と認められる価格を標準として判断すべきである。本件のように卸売に類する業態の場合、卸売業者販売価格の統制額を基準とすることは正当である。 第1 事案の概要:被告人が綿織物天竺を販売し…
事件番号: 昭和26(れ)1205 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令9条の2違反の成否において、取引価格が不当に高価であるか否かは、取引当時の類似物資の統制額や諸般の事情を参酌した「一般取引の適正価格」を標準として判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人らは、連合国占領軍の財産であるセメントの取引に関与し、物価統制令9条の2に違反する暴利行為を行った…