判旨
物価統制令9条の2違反の成否において、取引価格が不当に高価であるか否かは、取引当時の類似物資の統制額や諸般の事情を参酌した「一般取引の適正価格」を標準として判断すべきである。
問題の所在(論点)
物価統制令9条の2にいう「不当に高価」であるか否かの判断基準、および判決において具体的な適正価格を特定・明示する必要があるか。
規範
物価統制令9条の2の違反を判断するに際しては、必ずしも厳密な適正価格を明示する必要はない。不当に高価であるか否かの基準は、取引当時における類似の物資に対する統制額、その他諸般の事情を参酌した「一般取引の適正価格」を標準とすべきである。裁判所が判決において特定の物価庁告示を引用した場合、それは取引当時の統制額を参酌する趣旨と解される。
重要事実
被告人らは、連合国占領軍の財産であるセメントの取引に関与し、物価統制令9条の2に違反する暴利行為を行ったとして起訴された。被告人側は、法令上取引の目的物とならない物件であるから同令の対象外であること、および原判決が適正価格を明らかにせず理由不備があることを主張して上告した。原判決は、昭和22年物価庁告示第434号を法令適用の箇所で示していた。
あてはめ
本件物件は、公に認められた場合には何人でも収受・所持しうるものであり、法令上絶対に取引の目的物とならないものではない。また、原判決が物価庁告示を示したのは、類似物資の取引当時の統制額を参酌した趣旨と解される。したがって、一般取引の適正価格を標準として不当に高価であると判断した原審の認定に、理由不備の違法は認められない。
結論
物価統制令違反の判断において、一般取引の適正価格を標準とした原判決は正当であり、具体的な適正価格の不表示を理由とする上告は棄却される。
実務上の射程
経済統制法規における「不当な価格」の認定手法を示す。厳格な価格証明を要さず、告示や類似取引を参酌した『適正価格』との比較で足りるとする点で、実務上の立証負担を軽減する枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和25(れ)978 / 裁判年月日: 昭和25年10月26日 / 結論: 棄却
物価統制令第九条の二いわゆる不当に高価なる額なりや否やは所論のごとき原価計算に依るべきではなく、取引当時若しくはその前後における同種又は類以の物資に対する法令、告示通による統制価格又は公正な普通一般の取引界における市場価格等を参酌した社会経済秩序維持の適正価格を標準とすべきものと解するを相当とする。されば、原判決がAの…
事件番号: 昭和25(れ)1311 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令9条の2にいう「不当に高価なる額」とは、同種又は類似物資の統制価格を参酌し、社会経済秩序維持の観点から適正と認められる価格を標準として判断すべきである。本件のように卸売に類する業態の場合、卸売業者販売価格の統制額を基準とすることは正当である。 第1 事案の概要:被告人が綿織物天竺を販売し…