本件犯行は物価統制令第九条の二(不当高価契約等の禁止規定)の違反であつて、この違反の罪の成立には配給統制の存在を要しないのは勿論統制価格の存在をも要件としないものであるから、原審が本件魚油についての統制が廃止になつたにもかかわらず被告人に対して免訴の言渡をしなかつたのは正当であつて論旨は理由がない。
不当高価契約等の禁止規定違反の罪の成立と統制価格存在の要否
物価統制令9条の2
判旨
物価統制令9条の2違反(不当高価契約等の禁止)の罪は、対象品目の配給統制や統制価格の存在を成立要件とするものではない。したがって、行為後に価格統制が廃止されたとしても、免訴を言い渡すべき事由には当たらない。
問題の所在(論点)
物価統制令9条の2違反の罪に関し、行為後に対象品目の配給統制や価格統制が廃止された場合、刑訴法337条2号(刑の廃止)に準じて免訴の言渡しをすべきか。具体的には、統制価格の存在が同条の構成要件要素であるか否かが問題となる。
規範
物価統制令9条の2が規定する不当高価契約等の禁止違反の罪の成立には、配給統制の存在はもちろん、統制価格の存在も要件としない。
重要事実
被告人は魚油の取引に関し、物価統制令9条の2に違反する不当高価契約を締結したとして起訴された。犯行後の昭和25年に、農林省令および物価庁告示により、当該魚油の配給統制および価格統制がそれぞれ廃止された。被告人側は、統制の廃止を理由に免訴を主張して上告した。
あてはめ
本件犯行は、物価を不当に高く維持する契約等を禁じた物価統制令9条の2の違反である。同条の禁止規定は、具体的な統制価格が存在することや配給統制が実施されていることを当然の前提とするものではない。したがって、事後に省令や告示によって魚油の配給・価格統制が廃止されたとしても、犯行時に成立した不当高価契約等の禁止違反という罪の成否に影響を及ぼすものではない。原審が免訴を言い渡さなかった判断は正当である。
結論
被告人に対し、価格統制の廃止を理由とする免訴の言渡しをしないことは正当であり、有罪判決は維持される。
実務上の射程
法令の改廃が「刑の廃止」(刑訴法337条2号)に当たるか否かの判断において、禁止規定の趣旨が特定の価格設定そのものではなく「不当な価格」という包括的な行為態様にある場合、個別品目の価格制限解除は構成要件の欠如を意味しないことを示す。経済統制法規の効力範囲に関する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(あ)2408 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
物価庁の告示が業者の統制額を定めた場合には業者ではない者でも業者と同一の取引をするときは業者に対する統制額が適用されるものであるから統制額違反事件においては必ずしも業者であるか否かを確定判示しなくとも差支えないものである。