一 被告人等の犯意は被告人等の買受けた本件物質の価格が公定価格を超えたものであることを被告人等において認識するによつて成立し、さらにその違法であることの認識を必要としないことは当裁判所昭和二四年(れ)第二〇〇六号第二六年一月三〇日第三小法廷判決(判例集五巻二号三七問頁)の趣旨に徴して明らかなところである。 二 原審においては、期待可能性がないとの主張がなく、原判決もこの点につき何等判示していないに拘らず、上告審において始めてかかる主張がなされた場合には、その論旨は結局原判示にそわない事実を前提とする主張に帰する。
一 犯意の成立と違法の認識 二 上告審において始めて期待可能性がないと主張した場合と上告理由の適否
刑法38条1項3項,旧刑訴法409条,旧刑訴法360条2項
判旨
故意が成立するためには、行為者が自己の行為の対象となる事実(公定価格を超えた価格であること等)を認識していれば足り、その行為が違法であることを認識している必要はない。
問題の所在(論点)
故意の成立に「違法性の意識(自己の行為が違法であるとの認識)」が必要か。また、物価統制令違反等において事実の認識があれば故意を認めてよいか。
規範
犯罪の故意(刑法38条1項)が成立するためには、客観的構成要件に該当する事実の認識があれば足りる。自己の行為が法に違反するものであるという「違法性の意識」は、故意の成立に必要ではない。
重要事実
被告人3名は、物資を買い受けるに際し、その価格が法令の定める公定価格を超えていることを認識していた。弁護人は、被告人らにおいて違法であることの認識を欠いていたこと、および期待可能性が欠如していたことを理由に無罪を主張して上告した。
あてはめ
被告人らは、買い受けた本件物資の価格が公定価格を超えたものであることを認識していた。この事実は、処罰の根拠となる客観的事態の認識にほかならない。判例(昭和26年1月30日判決等)の趣旨に照らせば、この事実の認識があれば故意は成立し、さらにそれが違法であることの認識までを備える必要はない。したがって、違法性の意識の欠如を理由に故意を否定することはできない。
結論
被告人らの行為には故意が認められ、有罪。上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、故意の成立に違法性の意識を不要とする「不要説(制限故意説ではない立場)」を簡潔に示している。司法試験においては、刑法38条3項(法の不知)との関係で、故意の構成要素を論じる際の基礎的な判例として位置づけられる。ただし、現代の通説的見解である「責任説(違法性の意識の可能性を責任要素とする考え方)」との差異に留意して論述を組み立てる必要がある。
事件番号: 昭和24(れ)1694 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
一 原判決は、弁護人の「当時被告人において進駐軍の許可があり違法でないものと信じていたものであるから、犯意を欠き罪とならないものである旨」の主張に対し、所論のごとく当時被告人は判示超過価格による精米の売買につき違法の認識を有しなかつたと断じながら右は通常人としての注意を著しく欠き判示超過価格による精米の売買が法律上許容…