論旨は原審裁判所は原審公判に於て爲した、辯護人の證據調の請求に付決定をなさざる儘判決を宣告していると非難する。記録に當つてみると、辯護人申請の證人Aについてはついに何らかの決定がされないままに、辯論終結となり、判決が宣告されたのであつて、審理の經過は正に論旨の云う通りである。ところでここに問題になるのは右第二回公判調書中に「裁判長は……利益の證據があれば提出し得る旨を告げた處被告人及び各辯護人は前回公判調書記載と同様に答えた」すなわち「無い旨」を答えたとある點である。昭和二二年(れ)第一二九號同年一二月一一被第一小法廷判決は、公判終結の際における前記のごとき問答をもつて、直に辯護人はさきに請求した證人の訊問申請を抛棄したものと解したり、又は原審は結審に當り同證人訊問の請求を却下したものと解したりすることは、輕々に許されないところであるとして右の問答のあつた場合も刑訴法第四一〇條第一四號の事由あるもの、と判斷した。證據申請を重要視する刑訴法の精神上、右判例の考え方を正當と思う。すなわち論旨はこの點において理由があり、原判決は破棄せらるべきものである。
公判において爲した辯護人の證據調の請求につき決定をしないで結審した判決の違法
舊刑訴法344條1項,舊刑訴法410條14號
判旨
公判においてなされた証拠調べ請求に対し、裁判所が何ら決定を下さないまま結審・判決することは、被告人が「他に証拠はない」旨を述べたとしても、当然に請求の放棄や却下とはみなされず、審理不尽の違法となる。
問題の所在(論点)
公判でなされた証拠調べの請求に対し、裁判所が何ら決定をせずに結審・判決することが、審理不尽の違法(旧刑事訴訟法410条14号違反)に該当するか。また、結審時の「他に証拠はない」という答弁により請求が放棄されたとみなせるか。
規範
公判においてなされた証拠調べの請求に対しては、裁判所は何らかの決定(採用または却下)をなすべき義務を負う。結審に際し被告人が他に証拠がない旨を述べたとしても、それのみをもって既になされた証拠調べ請求を放棄したものと解したり、裁判所が暗黙に却下したものと解したりすることは許されない。
事件番号: 昭和24(れ)1474 / 裁判年月日: 昭和24年8月9日 / 結論: 棄却
一 訴訟手續に關する法規が改正された場合に新法を如何なる時から如何なる事件に適用するかは、經過法の立法に際して諸般の事情を勘案して決せらるべき問題であつて、法律に一任されているのである。(昭和二三年(れ)第一五七七號、同二四年五月一八日當裁判所大法廷判決参照) 二 刑訴應急措置法第一三條第二項は、上告に際し、人種、信條…
重要事実
被告人の弁護人が第一回公判において証人2名の証拠調べを請求したが、裁判所はいずれも留保した。その後、1名については公判外で尋問決定がなされたが、もう1名の証人Aについては何ら決定がされないまま、第二回公判が進行した。同公判の終結時、裁判長が利益となる証拠の有無を問い、被告人・弁護人が「無い」旨を答えたため、裁判所は証人Aの請求について決定を示さないまま判決を宣告した。
あてはめ
証拠調べの請求は刑事訴訟法上の重要な手続的権利であり、これに対する決定は明示的になされる必要がある。本件では、証人Aの請求が維持されているにもかかわらず、裁判所は何らの諾否の決定もしていない。結審時の問答はあくまで「新規の」証拠の有無を確認したものに過ぎず、既になされた具体的な証人請求を「撤回」する意思表示とまで解することはできない。したがって、請求を放置したままの判決は手続法上の義務に違反する。
結論
原判決を破棄し、差し戻す。証拠調べ請求に対する決定を欠いたままの判決は、審理不尽の違法がある。
実務上の射程
現行刑事訴訟法下においても、法298条1項に基づく証拠調べ請求に対し、決定(規則190条)をせずに結審することは、訴訟手続の法令違反となる。実務上、弁護側が「他に証拠はありません」と述べても、それは未決定の請求を放棄したことにはならないため、既に出している請求の帰趨を確認しないまま結審することは、重大な審理不尽の理由となる。
事件番号: 昭和25(あ)1207 / 裁判年月日: 昭和26年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない場合に上告を棄却する判断を示したものである。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が上告を申し立てた事案。具体的な公訴事実や下級審の判断内容については、本判決文(決定文)からは不明である。 第2 問題の所在(論点):被告人および弁護人が主張する上告…