一 旧刑訴法第一三九条但書は司法警察官訊問を為す場合においては司法警察吏をして立会わしむべしと規定しているのであるが、立会人が調書に署名捺印すべき規定はないのであるから立会人の署名捺印がないからといつてその調書は同条の規定に違反して無効であると解することはできない。 二 刑訴応急措置法に基く逮捕状の執行による被疑者逮捕の場合には同法第八条第四号の規定により同条第三号掲記の旧刑訴第一二七条及び第一二九条所定の手続を準用し逮捕された被疑者を受け取つた司法警察官はその被疑者を訊問することができることは当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第七七六号同二六年三月二八日大法廷判決)とするところであるから所論訊問調書は適法で証拠能力を有する。
一 旧刑訴法第一三九条但書の司法警察吏の立会と該立会人の署名捺印なき調書の効力 二 刑訴応急措置法に基く逮捕状により逮捕された被疑者に対する司法警察官の訊問調書の証拠能力
旧刑訴法56条,旧刑訴法58条,旧刑訴法71条,旧刑訴法139条但書,刑訴応急措置法8条
判旨
裁判所が被告人の精神状態を判断するにあたって必ずしも専門家による鑑定を命じる必要はなく、鑑定証人の証言や被告人の経歴等の他の証拠資料から心神耗弱等の認定を行うことは適法である。
問題の所在(論点)
裁判所が被告人の責任能力(心神喪失・心神耗弱)を認定する際、法律判断の前提として必ず専門家の鑑定を行わなければならないか。
規範
被告人の精神状態(責任能力)の認定については、必ずしも専門家による鑑定を経ることを要しない。他の証拠資料に基づき、裁判所が論理則・経験則に従って判断することが許容される。
重要事実
被告人Bは、過去に結核性脳膜炎で入院し、医師から「完全に回復することはなく、後遺症として意思能力が弱く思考判断力が低下する」との証言を得ていた。原審はこの鑑定証人の証言に基づき、Bを心神耗弱者と判断した。一方、Bは師範学校の本科に入学した経歴も有していた。弁護人は、専門家による精神鑑定を命じなかった原審の判断に違法があると主張して上告した。
あてはめ
原審は、医師Dの証言から被告人の結核性脳膜炎の後遺症(精神病学上の中間者)という事実を認定した。これに加え、Bが師範学校本科に入学した事実等の客観的経歴を総合的に考慮して、心神喪失には至らない心神耗弱の状態にあると判断した。このような判断過程において、鑑定証人の証言以外の資料を参酌することは適法であり、改めて専門家の鑑定を命じなくても違法ではない。
結論
裁判所が専門家の鑑定によらず、他の証拠資料を総合して責任能力の程度を判断することは適法である。
実務上の射程
責任能力の判断が「法的判断」であることを示す基礎的判例。実務上は、鑑定人の意見を尊重しつつも、犯行時の病状や経歴等の諸事実を総合して裁判所が独自の判断を下しうる根拠として引用される。
事件番号: 昭和23(れ)1175 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
原審裁判所が所論検証並びに証人訊問をする旨を弁護人永田菊四郎に通知した形跡がないこと並びに同弁護人がその検証及び証人訊問に立会わなかつたこと及び原判決が右証人中Aの供述記載を証拠として採用したとしても右検証及び証人訊問には相弁護人が立会い、同証人に対して訊問をしているばかりでなく、原審第三回公判期日には右相弁護人の外弁…
事件番号: 昭和26(れ)602 / 裁判年月日: 昭和26年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が強盗犯行時に酩酊状態にあったとしても、記録上の諸事実から責任能力が否定されるような精神状態にないと認められる場合には、心神喪失や心神耗弱の規定は適用されない。 第1 事案の概要:被告人は強盗の犯行に及んだ際、飲酒による酩酊状態にあり、心神喪失または心神耗弱の状態にあったと主張して上告した。…