原判決並にその舉示する證據によれば、被告人は、乳母車の「全部の部分品を他から買つて來て組み立て」たり、古い乳母車の「台は大部分修繕し籠は全部新しいのに取替え」たり、その他「古い乳母車を解体してまだ使える部分はその儘使い駄目になつた部分は新品と取り替えてやることを業」とし、かようにして出來上つた乳母車を、新品の通常の價格に劣らない對價で、顧客に引渡したものであることがわかる原判決は、被告人のかような所爲を、乳母車の製造及び移出販賣と認め物品税法のいわゆる「製造」及び「移出販賣」に該當するものと判斷したのである。原判決は所論のように、本來修繕であるものを製造と認めたのでもなく、又價格を著しく増大させたという理由だけで修繕が製造に轉化した判示としているものでもなく、前記のような所爲は端的に製造という概念にあたると判斷したのである。このような認定及び判斷はすべて證據に基いてなされているのであつて、その間何等の不當なかどもなく、經驗則に反する點もない。
物品税法のいわゆる「製造」及び「移出販賣」に該る一例
物品税法4條,物品税17條の3
判旨
物品税法における「製造」とは、単なる既存物品の修繕にとどまらず、部品の組み立てや大規模な換装を通じて新たな物品を創出する行為を指し、その対価が新品と同等である場合は製造に該当する。
問題の所在(論点)
旧物品の部品交換や再構成を伴う行為が、物品税法上の「修繕」にとどまるのか、あるいは課税対象たる「製造」に該当するのかが問題となった。
規範
「製造」とは、単なる修繕の範疇を超え、他から買い揃えた部品の組み立て、または旧物品の主要部分(台・籠等)の全部新調や解体・再構成を通じて、客観的に新たな物品を作り出す行為をいう。価格の増大のみを理由とするのではなく、その行為態様が実質的に新たな物品の創出といえるか否かによって判断する。
重要事実
被告人は、乳母車の全部品を他から買い集めて組み立てる行為、古い乳母車の台を大幅に修繕し籠を全て新品に取り替える行為、および古い乳母車を解体して使用可能部分を残しつつ不能部分を新品と取り替える行為を業としていた。こうして完成した乳母車は、新品の通常価格に劣らない対価で顧客に引き渡されていた。
あてはめ
被告人の行為は、全部品の組み立てや、主要な構成要素である籠の全面新調、さらには解体・再構成を伴うものである。これは単に既存の物品の機能を維持・回復させる「修繕」の域を超えており、出来上がった物品が新品同様の価格で取引されている実態に照らしても、端的に「製造」という概念に合致すると評価される。したがって、これを製造と認めた原判断に不当な点はない。
結論
被告人の所為は物品税法上の「製造」に該当し、被告人は納税義務を負う。また、受託者が製造者とみなされないとする主張も法律上の根拠がなく、排斥される。
実務上の射程
租税法における「製造」概念の解釈指針として重要。単なる価値の増加(修繕)と新たな物品の創出(製造)を区別する際、部品の換装割合や作業の工程、及び取引価格といった客観的事実から総合的に判断する手法を示している。
事件番号: 昭和32(あ)1767 / 裁判年月日: 昭和35年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物品税法(昭和35年改正前)における委託製造の規定により委託者が製造者とみなされるためには、販売業者が原料、労務、資金等を供給して製造を委託したという実態が必要である。実態が個人の事業による製造であるにもかかわらず、免税目的で宗教団体からの委託製造を仮装したに過ぎない場合は、受託者(実際の製造者)…