原判決の確定した事実によれば、被告人は昭和二四年三月一日より同月三〇日までに自己製造にかかる飴を合計七、三二三斤移出したのにかかわらず、翌四月一一日に右期間中の移出高は二〇〇斤であるとの物品税申告書を発送し同月一六日海南税務署にこれを到達させたが、これより前の同月一四日に被告人は検挙せられて右の不正事実は発覚していたというのである。即ち被告人は移出製品の数量等を過少に記載し、ことさらに残余の数量価額等を秘匿した内容虚偽の申告書を提出し、もつて正当の税金の納付を過少ならしめて、その不足税額を免れようとしたが、これを果さなかつたというのであるから、右の行為を物品税法第一八条第一項に問擬した原審の判断は正当というべきである(昭和二六年(あ)一六三二号、同二八年三月三日第三小法廷決定参照)
物品税逋奪罪にあたる一事例
物品税法18条1項
判旨
物品税のほ脱罪における「不正の行為」とは、移出数量を過少に記載し、残余を秘匿した虚偽の申告書を提出して税額を免れようとする行為を包含する。個々の行為を断片的に捉えるのではなく、一連の行為を相関連するものとして全体的に考察し、ほ脱の意思に基づくか否かにより判断すべきである。
問題の所在(論点)
虚偽の申告書を提出して税額を免れようとする行為が、物品税法18条1項(当時)の「偽りその他不正の行為により物品税をほ脱」しようとした罪(ほ脱未遂等)に該当するか。
規範
物品税法18条1項にいう「偽りその他不正の行為」とは、単なる不作為にとどまらず、納税義務を免れる意図をもって行われる積極的な詐術等の行為を指す。判断にあたっては、個々の行為を切り離して部分的に観察するのではなく、ほ脱の意思に基づき相関連する一連の行為として全体的に考察すべきである。
重要事実
被告人は、昭和24年3月中に製造した飴7,323斤を移出したにもかかわらず、翌月に移出高をわずか200斤と記載した虚偽の物品税申告書を税務署に提出した。申告書到達前の時点で既に検挙されていたが、被告人は移出数量等を過少に記載し、意図的に残余の数量・価額等を秘匿する内容虚偽の申告を行うことで、正当な税額の納付を免れようとした。
あてはめ
被告人は、実際の移出高が7,323斤であるという客観的事実に対し、200斤という極端に少ない数量を記載した申告書を提出している。これは単なる申告漏れではなく、ほ脱の意思をもって「ことさらに残余の数量価額等を秘匿」した内容虚偽の申告であると評価できる。このような虚偽申告によって不足税額を免れようとした一連の行為は、同条項にいう不正の行為に該当すると解するのが正当である。
結論
被告人の行為は物品税法18条1項の不正の行為に該当し、ほ脱罪(またはその未遂)が成立する。
実務上の射程
租税罰則における「不正の行為」の意義について、過少申告が単なる誤謬ではなく「虚偽・秘匿」を伴う場合にはこれに該当することを示した。答案上は、租税法におけるほ脱罪の構成要件解釈において、行為の全体性と意図的な秘匿行為の有無を判断基準とする際に引用できる。
事件番号: 昭和26(あ)592 / 裁判年月日: 昭和31年3月20日 / 結論: 破棄自判
昭和二三年法律第一〇七号による物品税法改正前において、政府に申告しないで、サツカリンを製造した行為は、右改正前の同法第一九条第一項第二号違反の罪として処罰すべきもので、同法第一八条違反の罪として処罰すべきでない。