一 旧物品税法(昭和三七年法律第四八号による改正前のもの)第一八条第一項第二号にいう「詐偽その他不正の行為」とは、逋脱の意図をもつて、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行なうことをいうものと解するを相当とする。 二 物品税を逋脱する目的で、物品移出の事実を別途手帳にメモしてこれを保管しながら、税務官吏の検査に供すべき正規の帳簿にことさら記載しないことは、他に右事実を記載した帳簿もなく、納品複写簿、納品受領書綴または納品書綴によつても右事実が殆んど不明になつている状況の下では(判文参照)、旧物品税法(昭和三七年法律第四八号による改正前のもの)第一八条第一項第二号にいう「詐偽その他不正の行為」にあたる。
一 旧物品税法(昭和三七年法律第四八号による改正前のもの)第一八条第一項第二号にいう「詐偽その他不正の行為」の意義 二 旧物品税法(昭和三七年法律第四八号による改正前のもの)第一八条第一項第二号にいう「詐偽その他不正の行為」にあたるとされた事例
旧所得税法69条1項(昭和25年法律69号による改正前のもの),旧所得税法69条1項(昭和29年法律52号による改正前のもの),旧物品税法18条1項(昭和24年法律286号による改正前のもの),旧物品税法18条1項2号(昭和37年法律48号による改正前のもの)
判旨
租税逋脱罪の構成要件である「偽計その他の不正の行為」とは、逋脱の意図をもって税の賦課徴収を不能または著しく困難にする工作を行うことをいい、単なる不作為であっても実態を不明にする工作を伴えばこれに該当する。
問題の所在(論点)
旧物品税法18条1項2号(現行の各税法における逋脱罪と同様の規定)にいう「詐偽その他不正の行為」の意義。特に、正規の帳簿への不記載という「消極的な不作為」が、単純不申告を超えて同行為に該当するか。
規範
「詐偽その他不正の行為」とは、逋脱の意図をもち、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるような何らかの偽計その他の工作を行うことをいう。単なる不申告(単純不申告)はこれに含まれないが、不作為であっても、その実態を不明にするような工作が積極的に行われる場合には、偽計その他の工作に該当する。
重要事実
被告人Aは、物品税を逋脱する目的で、物品を製造場から移出して販売した。その際、被告人は移出の事実を別途手帳にメモして保管しながら、税務官吏の検査に供すべき正規の帳簿にはこれをことさらに記載しなかった。また、他に当該事実を記載した帳簿はなく、納品複写簿や受領書綴等の他の書類によっても、販売の事実が殆ど不明な状況に置かれていた。
あてはめ
被告人は単に申告を怠っただけでなく、逋脱の意図をもって、税務官吏が検査すべき正規の帳簿に意図的に事実を記載せず、かつ別途秘匿用のメモを作成しつつ外部からは取引実態を不明にする状況を作り出していた。このような行為は、税の賦課徴収を著しく困難にする「工作」に他ならない。したがって、形式的には帳簿への不記載という不作為であっても、その実質において積極的な不正手段と同視できる工作が行われたといえる。
結論
被告人の行為は「詐偽その他不正の行為」に該当し、物品税逋脱罪が成立する。
実務上の射程
所得税法や法人税法等の脱税事件全般における「不正の行為」の解釈指針となる。単純不申告罪(不作為)と逋脱罪(作為による工作を要する)の境界線を示すものであり、帳簿の隠匿や虚偽不記載が「工作」と評価される際の認定基準として答案で活用すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)1632 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
本件被告会社の所為は物品税逋脱の目的を以て所轄税務署に対し第一審判決判示製造所から移出販売した被告会社の製品を故意に過少に記載し、ことさらに残余の数量価額等を秘匿した内容虚偽の申告書を提出し、且つ申告の内容に相当する物品税額のみを納付し以て物品税額に相当する金額を逋脱したというのであるから第一審判決の擬律は相当であり、…
事件番号: 昭和36(あ)188 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
物品税の納税義務者の従業員がその義務者の業務に関し不正行為をもつて物品税を逋脱した場合には、金員着服の目的によるときであつても、物品税法第一八条第一項第二号の罪が成立する。