昭和二三年法律第一〇七号による物品税法改正前において、政府に申告しないで、サツカリンを製造した行為は、右改正前の同法第一九条第一項第二号違反の罪として処罰すべきもので、同法第一八条違反の罪として処罰すべきでない。
昭和二三年法律第一〇七号による物品税法改正前において無申告でサツカリンを製造した行為に対する適用法条
物品税法(昭和23年法律107号による改正前のもの)19条,物品税法(昭和23年法律107号による改正前のもの)18条
判旨
物品税の不申告製造(密造)行為は、それ自体が一種の逋脱犯として物品税法19条1項2号により処罰されるため、移出の際に別途詐欺等の不正行為を伴わない限り、同法18条の逋脱犯は成立しない。
問題の所在(論点)
政府に申告せず課税物品を製造して移出した行為に対し、一般の逋脱犯規定(物品税法18条)と不申告製造の処罰規定(同法19条1項2号)のいずれを適用すべきか。「詐欺其の他不正の行為」の意義が問題となる。
規範
税法上の「詐欺其の他不正の行為」による逋脱犯が成立するには、納税義務者が税の査定を誤らせるために何らかの積極的な偽瞞的術策を用いることを要する。不申告製造(密造)を処罰する規定がある場合、密造行為自体に一種の逋脱犯としての性格が認められるため、密造した物品を単に移出したにすぎない場合は、積極的な不正手段を伴わない限り、密造に関する規定が適用され、一般の逋脱犯規定は適用されない。
重要事実
被告人は、政府に対し製造申告をせずに課税物品であるサッカリンを製造(密造)し、これを販売目的で製造場から他へ移出した。原審は、密造行為自体を「積極的な不正手段」と解釈し、物品税法18条(逋脱犯)を適用して逋脱額の5倍の罰金を科した第一審判決を維持した。これに対し、被告人側は、本件は同法19条1項2号(不申告製造)を適用すべきであると主張して上告した。
あてはめ
物品税法4条によれば、通常の製造者は移出時に課税されるが、不申告製造者の場合は同法19条により製造段階で直ちに税が徴収・処罰される。これは密造行為自体を一種の逋脱犯と認めた趣旨である。したがって、同法18条は主として製造申告をした者が移出過程で行う逋脱を想定したものであり、密造の過程における単なる逋脱には19条が適用されるべきである。本件被告人の行為は、密造した物品を移出したにとどまり、別途積極的な詐欺等の不正行為を伴っていない。ゆえに、18条を適用して処断した原判決は法の解釈を誤っているといえる。
結論
被告人の行為には物品税法19条1項2号(不申告製造)を適用すべきであり、同法18条(逋脱犯)を適用した原判決及び第一審判決は破棄を免れない。
実務上の射程
租税処罰法における「不正の行為」の解釈指針として重要。単なる不作為(不申告)や、その不作為から当然に予定される後続行為(密造品の移出)だけでは「積極的な偽瞞的術策」に当たらず、一般の逋脱犯には該当しないという限定解釈を示す際に引用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1632 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
本件被告会社の所為は物品税逋脱の目的を以て所轄税務署に対し第一審判決判示製造所から移出販売した被告会社の製品を故意に過少に記載し、ことさらに残余の数量価額等を秘匿した内容虚偽の申告書を提出し、且つ申告の内容に相当する物品税額のみを納付し以て物品税額に相当する金額を逋脱したというのであるから第一審判決の擬律は相当であり、…