判旨
物品税の逋脱犯の成否について、所得税法における単純不申告に関する判例は、課税手続等の著しい相違を理由に適用されない。
問題の所在(論点)
所得税法における「単純不申告は租税逋脱犯を構成しない」という判断枠組みが、物品税の逋脱犯に対しても同様に適用されるか。
規範
租税逋脱犯の成否を判断するにあたっては、各税法における課税手続及び性質の相違を考慮すべきであり、一の税種(所得税等)に関する単純不申告の可罰性についての判断は、性質の異なる他の税種(物品税等)に直ちに妥当するものではない。
重要事実
被告人が物品税の逋脱により起訴された事案において、弁護人は、所得税法に関して「詐欺その他の不正行為を伴わない単純不申告は処罰できない」とした最高裁判例(昭和24年7月9日判決)を引用し、本件物品税の事案においても同様に処罰し得ないと主張して上告した。
あてはめ
所得税と物品税を比較すると、その課税手続等において著しい相違が認められる。所得税法に関する先行判例は、あくまで同法の構造を前提としたものであり、物品税逋脱犯の成立については、別の先行判例(昭和24年12月13日判決)の趣旨に照らして判断されるべきである。したがって、所得税法の判例を根拠に物品税の処罰を否定する主張は、前提を欠くといえる。
結論
物品税の逋脱については、所得税法の単純不申告に関する判例は適切ではなく、同税の性質に基づき処罰が認められる。
実務上の射程
租税刑法の解釈において、ある税種で示された「偽りその他不正の行為」の意義や不申告の可罰性が、当然に他の税種に射程を有しないことを示す。答案上は、各税法の申告・納付手続の構造的差異に着目して、判例の射程を画定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)592 / 裁判年月日: 昭和31年3月20日 / 結論: 破棄自判
昭和二三年法律第一〇七号による物品税法改正前において、政府に申告しないで、サツカリンを製造した行為は、右改正前の同法第一九条第一項第二号違反の罪として処罰すべきもので、同法第一八条違反の罪として処罰すべきでない。