葡萄糖の製造販賣を目的とする會社の業務擔當者が、その業務に關し一般會計の外、特別會計等の祕密會計を設け、不正行爲により昭和二一年一〇月から同二二年八月までの間、葡萄糖の移出數量の一部を故意に政府に報告せず、その數量に相應する物品税を免れた事實がある以上は、いわゆる逋脱罪が成立するのであつて、物品税法第一九條第一號の虚僞申告罪を以て處罰すべきではない。
物品税逋脱罪が成立する事例
物品税法18条1項,物品税法18条2項,物品税法22条,物品税法19条1号
判旨
物品税を不正に免れた場合には物品税法18条が適用され、同法19条は不正な免脱を目的とせず他目的で虚偽の申告を行った場合の秩序罰的な規定として区別される。
問題の所在(論点)
不正な虚偽報告により物品税を免れた場合に、脱税の罰則を定めた物品税法18条が適用されるのか、それとも虚偽申告等に対する罰則を定めた同法19条が適用されるのか。
規範
物品税法18条は逋脱金額を基準に罰則を定めており、不正行為により現に物品税を免れた事実がある場合には同条の逋脱罪が成立する。これに対し、同法19条1項1号は一律の罰金額を定めていることから、不正に免れる目的ではなく他の目的をもって虚偽の申告を行った場合に適用される一種の秩序罰的な規定と解すべきである。
重要事実
被告会社の役員らが、会社の業務に関して一般会計とは別に特別会計等の秘密会計を設け、不正行為によって葡萄糖の移出数量の一部を故意に政府へ報告しなかった。これにより、本来納付すべき物品税の一部を免れたとして物品税法違反で起訴された。被告人側は、本件行為は虚偽申告を罰する規定(同法19条)の対象にすぎないと主張した。
あてはめ
本件において被告人らは、秘密会計を設けるなどの不正行為を行い、意図的に移出数量を少なく報告することで、現に物品税を免れている。このように税の免脱という結果が生じている以上、逋脱金額を基礎として重い罰則を課す18条の規定が適用されるべきである。19条は罰金額が一律であることに照らせば、免脱目的がない形式的な虚偽報告を想定した規定であり、本件のような実質的な脱税行為には適用されない。
結論
不正行為により物品税を免れた事案については、物品税法18条1項または2項を適用して処断すべきであり、19条の適用を認めることはできない。
実務上の射程
行政刑法における脱税罰(逋脱罪)と秩序罰的規定の峻別基準を示すものである。実効的な税収確保を目的とする租税法規において、不正な免脱という結果がある場合には、形式的な虚偽申告罪ではなく、より重い逋脱罪の規範が優先的に適用されることを示唆しており、罪数の評価や適用条文の選択において参考となる。
事件番号: 昭和33(あ)2535 / 裁判年月日: 昭和38年4月9日 / 結論: その他
物品税逋脱の意思による場合であつても、単に法定の申告書を提出しないで右税を免れたというだけでは、物品税法(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)第一八条第一項の罪(物品税逋脱罪)は成立しない。