執行猶豫の言渡をしないという一事は必らずしも憲法第一三條により保障せられている個人の尊嚴を侵すものでないことは、當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第二〇一號、同年三月二四日大法廷判決參照)
執行猶豫を言渡さない判決と憲法第一三條
憲法13條,刑法25條
判旨
共犯者の威圧により犯行に及んだ場合であっても、直ちに生命身体への危害が及ぶ緊急の状態になく、他に危難を避ける方途があるときは、緊急避難の成立は否定される。また、執行猶予を付さないことは、憲法13条の個人の尊厳に反しない。
問題の所在(論点)
共犯者からの心理的威圧や誘いがある場合に、刑法37条1項の「現在の危難」および「やむを得ずにした行為」という要件を充足し、緊急避難が成立するか。
規範
刑法37条1項の緊急避難が認められるためには、自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する「現在の危難」を避けるため「やむを得ずにした行為」であることを要する。具体的には、直ちに危害を加えられるような緊急の状態にあること、および当該犯罪行為を行う以外にその危難を避ける方途がないことが必要である。
重要事実
被告人Bは、共犯者Cから日本刀を示されて強盗に誘われた。Bは以前にCと喧嘩した際にCが日本刀を持ってきたことがあったため、断れば何をされるか分からないという不安を感じ、また金銭にも困窮していたことから、Cと共謀して本件強盗に及んだ。Bは、Cの威圧によって犯行に至ったものであるとして、緊急避難または過剰避難の成立を主張して上告した。
あてはめ
被告人がCの誘いを承諾しなければ生命身体等に危害を加えられるというような緊急の状態にあったとは認められない。また、Cに追従して他家に押し入り強盗を働くこと以外に、その危難を避ける方途がなかったことを窺わせる証跡も存在しない。したがって、Cの威圧が犯行の一因であったとしても、現在の危難の存在や補充性の要件を欠くため、緊急避難の成立は認められない。
結論
被告人の行為に緊急避難または過剰避難は成立せず、強盗罪等の成立を認めた原判決に法令違反はない。
実務上の射程
共犯者間での強要的状況を理由とする緊急避難の主張に対し、本判決は「直ちになされる危害の蓋然性(緊急性)」と「他行為可能性の欠如(補充性)」を厳格に求めている。答案上、共犯者の威圧がある事例では、まず責任阻却事由としての期待可能性を検討すべきだが、本判決の枠組みにより違法性阻却の段階で否定する論理として有用である。
事件番号: 昭和22(れ)17 / 裁判年月日: 昭和22年11月11日 / 結論: 棄却
所論後段は、原審が被告人に對する科刑につき、法律上の減軽及び酌量減軽をせず、刑の執行猶豫をしなかつたことを目して法令に違反すると主張するのであるが、原判決の認定した事實によれば、法律上の減軽事由はなく、酌量減軽をするかしないかは原審の自由裁量に屬することであるから、これらの減軽をしなかつた點に就て違法はない。したがつて…
事件番号: 昭和24(れ)1324 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提…