原審公判調書に、裁判官は「各訊問調書」の證據調をしたと記載されていることは、所論の通りである。しかし、右の記載は被告人に關する本件記録中に存するすべての訊問調書について證據調をした趣旨であることが明らかであつて、記録と對照すればそれが如何なる訊問調書であるか具体的に判明するのであるから、右の場合を所論のように「一件記録を證據調した」というやうな記載内容の不明な場合と同一に斷定することはできない。
「各訊問調書」の證據調をしたとの記載と「一件記録を證據調した」との記載の相異
舊刑訴法338條1項,舊刑訴法60條
判旨
証拠調の対象が記録中のすべての訊問調書を指すことが明らかな場合、具体的な個別調書を特定した証拠調がなされたものと解され、また現に証拠物として提示した以上は押収調書の証拠調を欠いても証拠採用は適法である。
問題の所在(論点)
公判調書において「各訊問調書」と包括的に記載された証拠調手続の適否、および証拠物の現示がある場合に押収調書の証拠調を欠くことが違法となるか(旧刑事訴訟法下における証拠調手続の適法性)。
規範
証拠調の適法性は、公判調書の記載が記録と対照して具体的な証拠物件を特定できるか、および証拠物そのものが現に裁判所で示されたかによって判断される。一括的な記載であっても、内容が客観的に判明し、かつ証拠物の現示が行われているならば、証拠調手続に違法はない。
重要事実
被告人の賭博事件において、原審の公判調書には「各訊問調書」の証拠調をした旨が記載されていた。また、裁判所に現に押収されている証拠物(花札三組およびツボ一個)を被告人に示して証拠調を行ったが、弁護人は「一件記録を証拠調した」というような不明確な記載であり、かつ押収調書の証拠調を欠くとして違法を主張した。
あてはめ
まず、公判調書の「各訊問調書」との記載は、記録中に存在するすべての訊問調書を指すことが明らかである。記録と対照すれば、司法警察官の訊問調書が含まれることは具体的に判明するため、内容不明な「一件記録の証拠調」とは異なる。次に、証拠物である花札等については、裁判所に現存する現物を被告人に示している。この場合、証拠物自体の取調べは完了しており、重ねて押収調書の証拠調を行う必要はない。したがって、いずれの証拠採用も適法な手続に基づいているといえる。
結論
本件証拠調手続に違法はなく、原審が各調書および証拠物を証拠に採用したことは正当であるため、上告は棄却される。
実務上の射程
証拠調手続の厳格性が問題となる場面で、実質的に証拠が特定され現示されていれば、調書上の形式的な包括記載や関連書面の欠如のみでは違法とはならないとする趣旨。現行法下(305条、306条等)でも、証拠の特定と現示の要否を検討する際の補助的理屈として活用し得る。
事件番号: 昭和25(あ)1469 / 裁判年月日: 昭和27年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が単なる刑訴法411条の職権破棄事由の主張にすぎない場合は、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人が憲法違反を理由として本件上告を提起したが、その主張の具体的な内容は、実質的に刑事訴訟法411条(判決に影響を及ぼすべき法令の違反、著しい量…
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未決勾留日数を本刑に算入する際全部を算入するかまたは一部を算入するかを裁判所の自由裁量にまかせている刑法第二一条が憲法に違反しないことは、昭和二二年(れ)第一〇五号同二三年四月七日大法廷判決、刑集二巻四号二九八頁の趣旨に照らし明らかである。