復權は有罪の言渡を受けたために喪失し又は停止された資格を回復するに止まり、刑の言渡の効力を失わせるものではないから、前科ある者が復權しているからとて、これに對し累犯加重の刑を科する妨げとはならない。
前科ある者が復權している場合における累犯加重の可否
刑法56條
判旨
前科の事実は「罪となるべき事実」ではないため、証拠調べを経た証拠による認定を要しない。また、復権は喪失した資格を回復させるにとどまり、刑の言渡しの効力そのものを失わせるものではないため、復権後であっても累犯加重を妨げない。
問題の所在(論点)
1. 前科の事実は、厳格な証明の対象となる「罪となるべき事実」に含まれるか。2. 復権を得た者に対して、当該前科を理由として累犯加重(刑法56条1項)を行うことは許されるか。
規範
1. 前科の事実は、犯罪構成要件たる「罪となるべき事実」に該当しないため、公判廷における厳格な証明(証拠調べを経た証拠による認定)を必ずしも必要としない。2. 復権の効力は、刑の言渡しを受けたことにより喪失・停止された資格を回復させる性質のものであり、刑の言渡し自体の効力を将来に向かって消滅させるものではない。
重要事実
被告人には前科があったが、原審(二審)は、公判廷で適式な証拠調べを経ていない被告人の前科調書の記載および被告人の公判廷での供述を総合して前科の事実を認定した。また、被告人は当該前科について既に復権を得ていたが、原審は累犯加重を適用して刑を言い渡した。これに対し、被告人側が証拠調べの不備および復権による累犯加重の禁止を理由に上告した事案である。
あてはめ
1. 前科は、構成要件に該当する具体的犯罪事実そのものではなく、量刑の基礎となる情状等に関する事実にすぎない。したがって、証拠調べを経ていない前科調書や被告人の供述に基づいて認定した原判決に手続上の違法はない。2. 復権はあくまで公法上の資格制限を解除する制度であり、過去に確定判決を受けたという歴史的事実や、それに基づく累犯としての刑事責任の加重を否定するものではない。よって、復権後であっても累犯加重の規定を適用することは正当である。
結論
1. 前科は「罪となるべき事実」ではなく、証拠調べを経ない認定も許容される。2. 復権は刑の言渡しの効力を失わせないため、累犯加重の適用を妨げない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法上の「厳格な証明」の対象範囲を確定させる際の基礎となる判例である。実務上、前科は情状事実として扱われ、自由な証明で足りると解される根拠となる。また、刑法上の累犯加重の要件検討において、復権の有無が再犯情状の評価に影響しないことを示す際に引用される。
事件番号: 昭和24新(れ)252 / 裁判年月日: 昭和25年11月22日 / 結論: 棄却
一 高等裁判所のした破棄差戻の判決に対しては、上告することができる 二 所論引用の判例(昭和二三年(れ)第九七八号同年一一月一八日第一小法廷判決)は、被告人の前科の有無を必ずしも前科調書により判断しなくてもよいというのであつて第一審判決後に取り寄せた前科回答書を控訴審が判断の資料としてはならない旨判示したものではないか…