判旨
被告人の前科は、罪となるべき事実(犯罪構成要件に該当する事実)ではなく、単なる情状に関する事実にすぎない。したがって、前科の存在を認定するにあたっては厳格な証明を必要とせず、自由な証明で足りる。
問題の所在(論点)
被告人の前科が「罪となるべき事実」に該当し、その認定に厳格な証明を要するか。また、前科の認定に被告人の供述(自白)のみを用いることが許されるか。
規範
刑法上の処罰の基礎となる「罪となるべき事実」については厳格な証明(適式な証拠調べを経た証拠能力ある証拠による証明)を要するが、量刑の判断材料にすぎない「情状に関する事実」については、厳格な証明を必要としない(自由な証明で足りる)。
重要事実
被告人の有罪判決において、原審が第一審の量刑の当否を判断する際、被告人の供述に基づき前科の存在を認定した。これに対し弁護人は、前科の認定に厳格な証拠調べが行われていない点、および被告人の供述のみで不利益な事実を認定した点が憲法違反(自白のみによる処罰の禁止等)に当たると主張して上告した。
あてはめ
本件における前科は、犯罪の構成要件を基礎付ける事実ではなく、量刑を決定するための情状にすぎない。情状に関する事実にすぎない以上、厳格な証拠説明(証拠調べ)を要する事項には当たらない。また、原判決は量刑の当否を判断したにすぎず、前科に関する供述のみをもって被告人を有罪としたわけではないため、自白の補強証拠に関する問題も生じない。
結論
被告人の前科は情状にすぎず、厳格な証明を必要としない。したがって、適法に前科を考慮した原判決に憲法違反の過誤はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法における「厳格な証明」と「自由な証明」の峻別を示す基本判例である。答案上は、累犯加重の基礎となる前科などは厳格な証明を要する一方、単なる量刑事情としての前科については本判例を根拠に自由な証明で足りると論じる際に用いる。
事件番号: 昭和25(あ)361 / 裁判年月日: 昭和25年10月10日 / 結論: 棄却
一 論旨は、被告人の供述のみを採つて前科の事実を認めたことは憲法の精神を表現した刑訴法第三一九条第二項に違反するというのである。しかし、憲法第三八条第三項は、或る犯罪につき被告人を有罪とするには自白のほかに他の証拠を必要とする趣旨を明らかにしたものであり(昭和二三年(れ)第一四二六号同二四年一〇月五日に当裁判所大法廷判…