判旨
前科は、当該犯罪の構成要件たる事実に属するものではないため、自白の補強証拠(刑事訴訟法319条2項)を要しない。
問題の所在(論点)
被告人の前科が「罪となるべき事実」に含まれるか。具体的には、前科の認定において、刑事訴訟法319条2項に基づく補強証拠が必要かどうかが問題となる。
規範
自白に対する補強証拠を必要とするのは、当該犯罪の構成要件を基礎付ける事実(罪となるべき事実)に限られる。これに対し、被告人の前科は、犯罪の構成要件たる事実に属するものではなく、量刑事情や累犯加重の前提となる事実にすぎないため、その認定に際して補強証拠を要しない。
重要事実
被告人が起訴された事件において、被告人には累犯加重の対象となるべき前科が存在した。弁護人は、前科の認定について自白以外の補強証拠がないことを理由に、憲法または刑事訴訟法に違反する旨を主張して上告した。判決文からは前科の具体的な内容や基礎となる罪名は不明であるが、累犯加重が問題となる文脈での前科認定の是非が争われたものである。
あてはめ
前科は、起訴された特定の犯罪事実そのものを構成する要素ではない。本件において、前科は累犯加重(刑法56条、57条)の適用を判断するための資料として用いられているにすぎず、刑罰の有無を左右する構成要件的要素ではない。したがって、被告人の自白によって前科を認定しても、構成要件事実の認定に関する補強証拠の原則には抵触しないと解される。
結論
前科は構成要件たる事実に属しないため、自白のみで認定することができ、補強証拠は不要である。
実務上の射程
刑事訴訟法319条2項の「罪となるべき事実」の範囲を画定する際、実体法上の構成要件該当事実(修正された構成要件を含む)に限定されることを示す。累犯加重の基礎となる前科については、本判例に基づき補強証拠不要の論理を答案で用いることが可能である。
事件番号: 昭和26(あ)1334 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の前科の事実は、憲法38条3項にいう「本人に不利益な唯一の自白」には当たらない。したがって、前科の事実を本人の公判廷における自白のみによって認定しても、同条項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、過去に執行猶予付きの判決を受けた事実(前科)があった。原審は、この前科の事実を、被告人の公…