一 高等裁判所のした破棄差戻の判決に対しては、上告することができる 二 所論引用の判例(昭和二三年(れ)第九七八号同年一一月一八日第一小法廷判決)は、被告人の前科の有無を必ずしも前科調書により判断しなくてもよいというのであつて第一審判決後に取り寄せた前科回答書を控訴審が判断の資料としてはならない旨判示したものではないから、原判決を目して所論最高裁判所の判例と相反する判断をしたものとすることはできない。
一 破棄差戻判決に対する上告の適否 二 職権による控訴審の事実の取調
刑訴法405条,刑訴法405条2号,刑訴法393条1項,刑法25条
判旨
控訴審において、第一審判決後から当該控訴審の審理時までに新たに取り寄せた前科回答書を、前科の有無を判断するための資料として採用することは許される。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審判決の後に取り寄せた前科回答書を、前科の事実認定の資料として採用することが許されるか(控訴審における新証拠の許容性)。
規範
控訴審は事後審としての性質を有するものの、事実の誤認や量刑の不当を是正するために、第一審判決後の新資料に基づき、第一審判決時に存在し得なかった、あるいは顕出されなかった事実を判断の基礎とすることは妨げられない。
重要事実
被告人が控訴した事件において、控訴審裁判所は第一審判決が言い渡された後に新たに外部機関へ照会し、取り寄せた「前科回答書」を証拠として採用し、被告人の前科の有無を判断した。これに対し弁護人は、第一審判決後の資料を控訴審が判断資料とすることは判例に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
判旨は、被告人の前科の有無の認定について、必ずしも第一審で顕出された前科調書に限定されるものではないとする。第一審判決後に新たに判明した、あるいは取り寄せた資料であっても、それが事案の真実(前科の有無)を明らかにするために資するものであるならば、控訴審がこれを判断の資料とすることは適法な手続であるといえる。
結論
控訴審が第一審判決後に取り寄せた前科回答書を判断の資料とすることは適法であり、判例違反にも当たらない。
実務上の射程
控訴審が事後審的性格を持つとしても、量刑判断の基礎となる前科等の事実について、審理の便宜や事案の真相把握のために、控訴審段階で新たに取得された客観的な公的証明書を証拠採用することを肯定する際に活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2507 / 裁判年月日: 昭和26年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審判決が、第1審判決の示した証拠によって犯罪事実を認定できると判示した場合は、実質的に控訴趣意に対する判断を示したものと解される。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪に問われ、第1審で有罪判決を受けた。被告人はこれに対し控訴を申し立てたが、控訴審判決(原判決)は第1審判決が挙げた証拠を引用する形…