被告人Aに對し、第一審判決は所論のごとく、同人を少年と認め四年以上六年以下の懲役及び罰金五百圓(金二〇圓を一日に換算して勞役場留置を言渡し、原審判決は成年として懲役三年及び罰金千圓(換算率前同様)を言渡したことは記録上明白である。されば懲役三年及び罰金千圓を言渡した原判決の宣告刑は、第一審判決の宣告刑に比べると、罰金において金五百圓だけ多いのであるが。懲役において一年ないし三年輕いのである。そして舊刑訴法四〇三條にいわゆる「原判決の刑より重き刑」(舊刑訴法第五三七條參照)であるか否かは、具体的に言渡された控訴判決の宣告刑の全体と第一審判決の宣告刑の全体を總合的に比較して決すべきで、その宣告刑に包含される數個の刑を個別的に比較して部分的に重きか否かを判斷すべきでないこと勿論である。そして、第一審の宣告刑と第二審のそれとを總体的に比照すれば原審の宣告刑は到底第一審のそれより重いと認める事はできない。
第一審判決と控訴審判決の刑の輕重の比照と不利益變更禁止
舊刑訴法403條,少年法52條1項
判旨
不利益変更禁止の原則の適用に際し、第一審と控訴審の刑の軽重を比較するには、宣告刑に包含される数個の刑を個別に比較するのではなく、宣告刑の全体を総体的に比較して判断すべきである。
問題の所在(論点)
不利益変更禁止の原則(現行刑訴法402条)における刑の軽重の比較に関し、懲役刑が減軽される一方で罰金刑が増額された場合のように、宣告刑の内容が複数の刑種から成る場合に、どのように軽重を比較すべきかが問題となる。
規範
不利益変更禁止の原則(旧刑訴法403条、現行刑訴法402条)における「原判決の刑より重い刑」に該当するか否かは、具体的に言い渡された控訴判決の宣告刑の全体と、第一審判決の宣告刑の全体を総体的に比較して決定すべきである。宣告刑に含まれる主刑や付加刑(懲役、罰金、換算等)を個別に比較し、その一部が重くなっているか否かをもって判断すべきではない。
重要事実
被告人Aに対し、第一審判決は少年法を適用し「4年以上6年以下の懲役及び罰金500円(労役場留置換算1日20円)」を言い渡した。これに対し、原審(控訴審)判決は被告人を成人として扱い「懲役3年及び罰金1000円(労役場留置換算同左)」を言い渡した。弁護人は、罰金が500円増額されている点について、不利益変更禁止の原則に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件における第一審と控訴審の宣告刑を比較すると、控訴審の判決は、罰金額においては第一審より500円増加している。しかし、自由刑については、不定期刑(4年以上6年以下)から定期刑(懲役3年)へと変更されており、最短期間・最長期間のいずれと比較しても1年から3年程度軽くなっている。これらを総体的に比照すれば、罰金の増額分を考慮したとしても、控訴審の宣告刑全体が第一審のそれより重いと認めることはできない。
結論
控訴審の宣告刑は第一審の刑よりも重いとはいえず、不利益変更禁止の原則には抵触しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
本判例は、刑法上の刑の軽重比較(刑法10条)の基準を前提としつつ、不利益変更禁止の原則における実務的な比較手法として「全体としての総体的比較」を確立したものである。答案上は、懲役刑の短縮と引換えに罰金や没収が付加されたような事例において、利益・不利益を相殺して全体として被告人に有利か否かを検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)2843 / 裁判年月日: 昭和25年4月4日 / 結論: 棄却
論旨は、原判決が被告人を懲役一年六月に處したのは、第一審判決の刑より重い刑を言渡したものであつて、舊刑訴法四〇三條に反するというのである。しかし被告人は、本件第一審において懲役一年以上三年以下の不定期刑の言渡を受けその判決に對して控訴し、また別件第一審において懲役一年の刑に處せられその判決に對して控訴し、原裁判所は右二…
事件番号: 昭和23(れ)745 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示する該其連續した行爲の始期終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪であつて被害者又は賍額に異同があるときは被害者中ある者の氏名を表示する外他は員數を掲げ賍額の合計…