職權を以て調査すると、被告人は、昭和二三年七月二三日千葉地方裁判所で横領並に窃盜罪により懲役一年(三年間執行獪豫)の判決を云渡され、その判決は上訴期間の經過により同年同月三〇日確定したもたものである。從つて原判決の確定した判示(一)の恐喝罪は右確定判決のあつた横領並びに窃盜の罪と併合罪の關係があるけれども右確定判決後の判示(二)及び(三)の恐喝罪とは併合罪の關係にあるものでないことは刑法四五條の規定に照らし明らかである。しかるに、被告人に對し單一の刑を宣告したのは擬律錯誤の違法を犯したものといわなければならない。
數個の犯行の間に確定判決のあることを無視した判決と擬律錯誤の違法
刑法45條,刑法50條,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法409條
判旨
確定判決後の罪と確定前の罪がある場合、これらをすべて併合罪として単一の刑を宣告することは刑法45条に反し許されない。
問題の所在(論点)
確定判決前後の複数の罪を、刑法45条の併合罪として一括して処断することの可否(擬律錯誤の有無)。
規範
確定判決を経た罪がある場合、その判決の確定前に犯した罪(刑法45条後段)と、その確定後に犯した罪との間には、刑法45条に基づく併合罪の関係は成立しない。したがって、これらを一括して一つの刑に処することはできず、分離して刑を言い渡さなければならない。
重要事実
被告人は、昭和23年7月23日に横領及び窃盗罪により懲役1年(執行猶予3年)の判決を受け、同年7月30日に確定した。被告人は、この確定判決の前に一つの恐喝(一)を行い、確定判決後に二つの恐喝(二・三)を行った。原審は、これら(一)から(三)の恐喝罪すべてを併合罪として扱い、被告人に対して単一の刑を宣告した。
あてはめ
被告人の恐喝罪(一)は横領等の確定判決前に犯されたものであり、当該確定判決の罪と刑法45条後段の併合罪の関係にある。一方で、恐喝罪(二)及び(三)は当該判決の確定後に犯されたものであり、恐喝罪(一)とは併合罪の関係に立たない(刑法45条参照)。それにもかかわらず、原審が(一)から(三)のすべてを併合罪として単一の刑を宣告したことは、法の適用を誤った擬律錯誤の違法があるといえる。
結論
確定判決前の罪(一)と確定後の罪(二・三)をすべて併合罪として処断することはできず、原判決は破棄される。恐喝(一)について懲役6月、恐喝(二・三)について懲役1年をそれぞれ言い渡すべきである。
実務上の射程
複数の余罪がある事案において、中間に確定判決が介在する場合の処断刑の算定に関する重要判例。答案上は、刑法45条後段の「確定判決」の有無を確認し、前後の罪を峻別して、それぞれ別個の主文を構成する際の法的根拠として用いる。
事件番号: 昭和43(あ)1640 / 裁判年月日: 昭和43年11月26日 / 結論: 棄却
原判決が、昭和四三年法律第六一号による改正後の刑法第四五条を適用して一個の懲役刑を科すべきであつたのに、右改正前の同条を適用して三個の懲役刑を科したのは、判決に影響を及ぼすべき法令違反であるが、本件事案のもとでは(判文参照)、原判決を破棄しなくても著しく正義に反するものとは認められない。