被告人が一箇の恐喝行為によつて同時に二人の被害者から全品を奪取した所為に対し刑法第五四条第一項前段、第一〇条を適用しなかつた点に、たとえ判例違反があるとしても、右犯行と併合罪の関係にある他の恐喝罪の刑に併合罪の加重をして処断している以上、右判例違反は判決に影響を及ぼさないことが明らかである。
判例違反が判決に影響を及ぼさない一事例
刑訴法405条,刑訴法410条1項,刑法249条,刑法54条1項,刑法45条前段,刑法47条
判旨
複数の犯罪行為が処断上一罪(観念的競合等)の関係にある場合であっても、他の独立した犯罪と併合罪の関係にあるときは、最も重い罪の刑に基づく加重の結果として判決に影響を及ぼさない限り、罪数の誤認は破棄理由とならない。
問題の所在(論点)
数個の犯罪事実が混在する場合において、処断上一罪とされるべき関係にある行為をそのように扱わなかったことが、刑事訴訟法405条等の上告理由(判決に影響を及ぼすべき法令違反)に該当するか。
規範
被告人の複数の行為が、本来であれば刑法54条1項前段の観念的競合(処断上一罪)として扱われるべき場合であっても、それらの行為とは別に併合罪(刑法45条前段)の関係にある他の犯罪事実が存在し、かつ、最も重い罪の刑に併合罪加重をして処断されているのであれば、処断上一罪の規定を適用しなかった法令適用の誤りは、判決に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人が複数の犯罪行為に及んだ事案において、原審はある犯行について観念的競合(刑法54条1項前段)としての処理を行わず、別の独立した恐喝罪等と併合罪(刑法45条前段)の関係にあるものとして処断した。弁護人は、一部の行為が処断上一罪であることを主張し、原判決には判例違反があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、指摘された特定の犯行が仮に処断上一罪であったとしても、判示された他の恐喝罪との間では併合罪の関係が成立する。原判決は、一連の罪の中で最も重い「判示第三の恐喝罪」の刑に対して併合罪加重(刑法47条)を行って刑を決定している。したがって、一部の行為について観念的競合の規定を適用しなかった点に誤りがあったとしても、最終的な処断刑の範囲や宣告刑の結論に変わりはなく、判決の結果に影響を及ぼすものとは認められない。
結論
一部の行為について処断上一罪の適用を漏らしたとしても、併合罪加重の結果として判決の結論に影響がない限り、判決を破棄すべき理由にはならない。
実務上の射程
罪数論の誤りがあった場合でも、科刑上の不利益がない限りは判決に影響を及ぼさない法令違反として処理される実務上の取扱い(いわゆる「判決に影響を及ぼさない法令違反」)を、観念的競合と併合罪が混在する場面で確認したものである。答案上は、罪数の認定が微妙な場合でも、最終的な法定刑の枠組みが変わらない場合には本法理を想起すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)2311 / 裁判年月日: 昭和25年2月16日 / 結論: 破棄自判
職權を以て調査すると、被告人は、昭和二三年七月二三日千葉地方裁判所で横領並に窃盜罪により懲役一年(三年間執行獪豫)の判決を云渡され、その判決は上訴期間の經過により同年同月三〇日確定したもたものである。從つて原判決の確定した判示(一)の恐喝罪は右確定判決のあつた横領並びに窃盜の罪と併合罪の關係があるけれども右確定判決後の…
事件番号: 昭和41(あ)1986 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわた…