判旨
刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。
問題の所在(論点)
刑事裁判の量刑において、起訴されていない余罪(または別件で審理中の事実)を考慮することが、実質的な余罪処罰として許されない限度を超えるか否か。
規範
刑事量刑において、余罪を犯罪事実として認定し、実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは、二重処罰の禁止等の観点から許されない。しかし、量刑は被告人の性格、経歴、境遇、犯罪後の状況等一切の事情を考慮して決定すべきものであるため、情状の一つとして余罪を考慮することは、法定刑の範囲内であれば許容される。
重要事実
被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわたる常習暴力事犯(余罪)で起訴され、現在審理中であるという事実が量刑の判断材料とされた。弁護人は、これが余罪を処罰する趣旨の重すぎる量刑であり、憲法等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
原判決は、被告人が余罪につき起訴され審理中である事実を指摘しているが、これは被告人の「犯罪後の状況」を示す一情状として考慮したにすぎない。余罪を直ちに確定した犯罪事実として認定し、これに対する刑罰を本件に上乗せする(処罰する)趣旨で重く量刑したものではないことは、判決文の文脈から明らかである。したがって、量刑判断のプロセスに違法はない。
結論
被告人が余罪で起訴・審理中である事実を量刑上の情状として考慮することは適法であり、実質的な余罪処罰には当たらないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
量刑事情としての余罪考慮の限界を示す。実務上は、余罪を「処罰」するのではなく、被告人の「犯情」や「一般予防・特殊予防的観点(性格や更生可能性等)」を評価するための資料として用いるのであれば、本判例の枠組みで許容される。答案では、認定された事実が単なる情状か、実質的処罰かを区別して論じる際に活用する。
事件番号: 昭和49(あ)2188 / 裁判年月日: 昭和50年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑の資料に供することは許されないが、被告人の性格、経歴、犯罪の動機、目的、態様、結果等の情状を推知するための資料として考慮することは妨げられない。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実以外の余罪についても量刑の資料とされたことに対し、弁護人が憲法31条(適正手続)および…
事件番号: 昭和54(あ)1713 / 裁判年月日: 昭和55年3月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が余罪を量刑の資料として考慮することは、単なる一情状として考慮するにとどまり、実質的に当該余罪を処罰する趣旨でない限り、許容される。 第1 事案の概要:被告人Bは、起訴された犯罪事実以外の事実(余罪)について、原審において量刑上の情状として考慮された。弁護人は、この余罪の考慮が実質的な処罰に…