起訴されていない犯罪事実と量刑上の考慮
憲法31条
判旨
余罪を量刑の資料として考慮することは、実質的に当該余罪を処罰する趣旨でない限り、憲法上の適正手続等に反しない。
問題の所在(論点)
刑事裁判における量刑決定の際、起訴されていない事実(余罪)を考慮することが、実質的な余罪処罰として憲法に違反するか。
規範
量刑にあたって未決の別罪(余罪)を考慮することは、それが被告人の性格、経歴、犯罪の動機、目的、態様等の情状を推知するための資料(情状資料)にとどまる限り許容される。しかし、当該余罪を実質的に処罰する趣旨で考慮することは、起訴されていない事実について刑罰を科すことになり、適正手続(憲法31条)及び不告不理の原則に反し許されない。
重要事実
被告人が起訴された事実について、第一審判決が量刑を決定した際、弁護人は原審が所論の事実(余罪)を考慮して処罰したと主張して控訴・上告した。原審(控訴審)は第一審の量刑を審査するにあたり、所論の事実を一資料としていたが、弁護人はこれが実質的な余罪処罰にあたると主張して違憲を訴えた。
あてはめ
本件において、原審は第一審判決の量刑の妥当性を審査する際、指摘された事実(余罪)を量刑の一資料として用いたにすぎない。これは被告人の情状を把握するための材料として考慮されたものであり、その判文の内容に照らしても、当該事実を独立した犯罪として実質的に処罰する趣旨で考慮したものではないことが明らかである。したがって、被告人の防御権を侵害し、適正な手続を欠いたものとはいえない。
結論
余罪を単なる量刑資料として考慮することは適法であり、実質的に処罰する趣旨でない限り憲法違反にはあたらないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
司法試験では「余罪の考慮」が論点となる際、本判例を引用して『情状資料としての考慮』と『実質的処罰』を区別する規範を定立する。考慮が許される限界として、単なる情状の推知にとどまるか、あるいは刑期を不当に引き上げるための処罰的考慮となっているかを、判文の表現等から判断する際の根拠とする。
事件番号: 昭和41(あ)1986 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわた…