判旨
余罪を量刑の資料とする際、単に量刑の一情状として考慮することは許されるが、実質的にその罪を処罰する趣旨で考慮することは憲法31条等に抵触し許されない。また、余罪に関する事実認定に一部誤りがあっても、それが被告人の性格認定や結論に影響しない程度であれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
確定判決のない余罪を量刑の資料として考慮することが、実質的な処罰にあたり憲法31条に違反しないか。また、余罪に関する事実認定に誤りがあった場合、判決に影響を及ぼすか。
規範
被告人の余罪を量刑の資料として考慮することは、それが単に量刑の一情状(被告人の性格、経歴、犯罪の動機、態様等)を推認させる資料として考慮されるにとどまる限りは許容される。しかし、当該余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑の資料とすることは、適正な手続(憲法31条)を欠く処罰となるため許されない。
重要事実
被告人は、過去に女子高校生に対する強姦(昭和39年頃)および女子工員に対する強姦未遂(昭和40年頃)の事実があると認定され、これが量刑の資料とされた。原判決はこれらの事実を認定したが、被告人の供述調書によれば、実際には「名も知らない女子高校生との肉体関係」および「女子工員と無理に肉体関係を持とうとして逃げられた」という事実であった。原判決の認定は一部事実を誤認していたが、被告人の性規範に背反する性格を認定する資料としてこれを用いていた。
あてはめ
本件において原判決は、余罪を単に量刑の一情状として考慮しているにすぎず、実質的に余罪を処罰する趣旨で資料としたとは認められない。また、原判決の認定には女子高校生への強姦等の事実誤認が含まれるものの、被告人の供述によれば性規範に背反する行動自体は認められる。したがって、当該誤認は被告人の性格認定の基礎として致命的なものではなく、原判決の量刑判断に影響を及ぼすものではないといえる。
結論
余罪を単に一情状として考慮することは許容され、憲法31条に違反しない。事実誤認が性格認定や量刑に影響しない限り、上告理由とはならない。
実務上の射程
司法試験の刑事訴訟法・刑法における量刑の論点。余罪考慮の限界を「情状としての考慮」と「実質的処罰」に分ける枠組みを提示する際に用いる。事実認定に多少の齟齬があっても、被告人の性格評価という情状判断の枠内で収まれば適法とされる傾向を示す事例である。
事件番号: 昭和47(あ)151 / 裁判年月日: 昭和47年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を量刑の資料として考慮することは、実質的に当該余罪を処罰する趣旨でない限り、憲法上の適正手続等に反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事実について、第一審判決が量刑を決定した際、弁護人は原審が所論の事実(余罪)を考慮して処罰したと主張して控訴・上告した。原審(控訴審)は第一審の量刑を…
事件番号: 昭和41(あ)1986 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわた…
事件番号: 昭和50(あ)2212 / 裁判年月日: 昭和53年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人及び弁護人による上告趣意が憲法違反を主張するものであっても、その実質が単なる法令違反や事実誤認にすぎない場合には、刑訴法405条の上告理由には当たらないと判示したものである。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、憲法31条違反、法令違反、事実誤認、量刑不当を理由として上告を申し…