判旨
余罪を量刑の資料として考慮することは、それが被告人の性格や犯行の動機等を推知するための情状として用いられる限り、実質的な処罰を意味せず許容される。
問題の所在(論点)
公訴事実以外の犯罪事実(余罪)を量刑の資料として考慮することが、二重処罰の禁止(憲法39条)や適正手続き(憲法31条)に抵触し許されないのではないか。
規範
未判決の犯罪事実(余罪)を、公訴事実外の犯罪事実として認定し実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮することは許されない。しかし、被告人の性格、経歴、犯行の動機、態様等の情状を推知するための資料として考慮することは、適法な量刑権の範囲内として許容される。
重要事実
被告人は強制わいせつ等の罪により第一審判決を宣告された後、保釈出所中に重ねて強制わいせつ未遂の罪を犯した。原判決(控訴審)は、この保釈中の犯行の事実を、被告人の「強度に固定化した性的非行性格を推知する一情状」として考慮し、量刑を判断した。これに対し弁護人は、余罪の考慮が憲法39条の二重処罰禁止等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において原判決は、保釈中の犯行を独立した犯罪事実として認定し、これに対する刑罰を課す趣旨で考慮したものではない。あくまで被告人の「強度に固定化した性的非行性格」という、人格的な傾向を把握するための情状資料として用いたにすぎない。このような考慮は、被告人の性格や再犯の危険性を評価する上で合理的な関連性があり、実質上余罪を処罰したものとは認められない。
結論
余罪を性格等の情状推知の資料として考慮することは、実質的な処罰に当たらないため、憲法39条等に違反せず適法である。
実務上の射程
司法試験の刑訴法(量刑論)において、余罪考慮の限界を示すリーディングケースとして活用できる。「実質的な処罰」に当たるか、単なる「情状推知の資料」にとどまるかを、認定された事実の使われ方から区別する際の規範となる。
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