刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)により,選択刑として50万円以下の罰金刑が追加された窃盗罪の法定刑の変更は,当該窃盗罪の犯情,第1審判決が併せて認定した他の犯罪の有無及びその内容等に照らし,上記法改正との関係からは第1審判決の量刑を再検討する余地のないことが明らかである場合には,刑訴法397条1項により第1審判決を破棄すべき刑の変更に当たらない。
刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)による窃盗罪の法定刑の変更と刑訴法397条1項による第1審判決の破棄の要否
刑法6条,10条,235条,同法(平成18年法律第36号による改正前のもの)235条,刑訴法383条2号,397条1項
判旨
被告人に有利な罰則の改正(刑の廃止、法定刑の減軽等)がなされた場合であっても、刑法6条にいう「刑の変更」に当たらない限り、憲法31条、39条及び刑訴法335条2項に反するものではない。
問題の所在(論点)
犯罪後の法改正により法定刑に罰金刑が追加(減軽的な変更)された場合に、経過規定により旧法の重い法定刑を適用して処断することが、憲法31条(適正手続)、39条(罪刑法定主義・不利益変更禁止)及び刑訴法335条2項等に違反するか。
規範
刑法6条が規定する「法律により刑の変更があったとき」とは、犯罪後の法律改正により、当該犯罪についての法定刑が変更された場合を指す。一方、憲法31条、39条は、事後法による処罰や二重処罰を禁ずるものであり、犯罪後に刑罰が軽減された場合に必ずしも最軽量の刑を適用することを憲法上の原則として要求しているわけではない。したがって、経過規定により旧法を適用することは、それが合理的な裁量の範囲内である限り、憲法及び刑訴法上許容される。
重要事実
本件では、平成14年法律第138号による刑法の一部改正により、被告人が犯した罪の法定刑について「10年以下の懲役」から「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」へと罰金刑が選択肢として追加された。しかし、同改正法の附則によれば、施行前にした行為の罰則の適用については、なお従前の例によると規定されていた。
事件番号: 昭和24(れ)28 / 裁判年月日: 昭和24年5月31日 / 結論: 棄却
論旨は、原審は本件の併合罪につき法定の加重をするに當り、窃盜罪と強盜未遂罪との刑の輕重の比較において窃盜罪を重しとしてその刑に法定の加重をしているが、それは違法であるというのである。しかし、同時に刑を加重減輕すべきときには、併合罪の加重は、先だつて法律上の減輕をしなければならないことは、刑法第七二條の規定するところであ…
あてはめ
本件改正は、罰金刑を選択肢として追加したにとどまり、懲役刑の長期自体は変更されていない。改正法附則において従前の例によると定めたのは、改正前後の刑の選択に関し、裁判所に裁量の余地を与えない趣旨である。このような経過措置を設けることは立法府の合理的な裁量の範囲内であり、適正な手続を欠くものとはいえない。また、既になされた犯罪行為に対し、行為時に定められていた刑罰を科すことは、事後法による処罰を禁ずる憲法39条の趣旨に反するものではない。さらに、判決文によれば「理由を明示する必要はない」として、刑訴法上の違法も否定される。
結論
被告人に有利な法改正があった場合でも、経過規定に基づき行為時の重い法定刑を適用することは合憲・適法であり、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
平成14年刑法改正(罰金刑併科・追加等)に関する経過規定の合憲性が争われた事例。刑法6条の例外を定める経過規定の効力と憲法31条・39条の関係を整理する際に参照すべき。実務上は、法改正時の「なお従前の例による」という経過規定の一般的有効性を裏付ける根拠となる。
事件番号: 昭和28(あ)4896 / 裁判年月日: 昭和30年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再犯加重の適用において、刑法59条の消滅期間の解釈に誤りがあったとしても、他の前科との間で刑法56条1項の累犯要件を満たす限り、処断刑の範囲に差異が生じないため、判決に影響を及ぼすべき法令違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人には複数の前科があったところ、弁護人は上告審において、原審が刑法…