判旨
再犯加重の適用において、刑法59条の消滅期間の解釈に誤りがあったとしても、他の前科との間で刑法56条1項の累犯要件を満たす限り、処断刑の範囲に差異が生じないため、判決に影響を及ぼすべき法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
判決が挙行した再犯加重の基礎となる前科の中に、刑法59条により消滅したと解されるものが含まれていた場合、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきか。
規範
刑法56条1項の累犯要件を満たす前科が複数存在する場合、そのうちの一部の前科について刑法59条による刑の消滅の該非に判断の誤りがあったとしても、他の有効な前科によって処断刑の範囲が同一に保たれるのであれば、当該誤りは判決の結果に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人には複数の前科があったところ、弁護人は上告審において、原審が刑法59条(刑の消滅)の適用を誤り、本来加重の根拠とすべきでない前科を累犯加重(再犯)の基礎とした旨を主張した。しかし、記録上、累犯加重の対象となる他の前科が存在しており、その前科と本件犯行との間には刑法56条1項の要件が備わっていた。
あてはめ
本件において、仮に特定の各前科について刑法59条の適用に誤りがあったとしても、本件犯行との間に刑法56条1項の要件を充足する別の前科が存在している。この場合、再犯としての処断刑の範囲(刑法57条)は、どの前科を基礎とするかに関わらず何ら差異を生じない。したがって、法令適用の誤りが判決の結論を左右するものとは認められない。
結論
本件において刑訴法411条を適用すべき事由(著しい正義に反する法令違反等)は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
累犯加重(再犯)の要件充足性を検討する際、複数の前科がある事案では、一部の前科に消滅等の瑕疵があっても、予備的に他の前科で加重の正当性を維持できるという実務上の処理を示している。答案上は、法令違反の「判決への影響」を否定する論理として引用可能である。
事件番号: 昭和28(あ)4867 / 裁判年月日: 昭和29年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法39条(二重処罰の禁止等)および憲法37条1項(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)の違反を主張して量刑不当を争う上告は、原審で主張・判断を経ていない事項であり、かつ実質的に量刑を非難するものに過ぎない場合は適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は刑を言い渡されたが、量刑…